企業の設備投資が4 年ぶりに低調 コスト高と景気の先行きの影響か
2024/09/10
半導体関連やデータセンターの新設、企業のDXや生成 AI といった新技術導入など、企業の成長には設備投資が有効である。しかしそれが思うように進んでいないという調査結果が発表された。
設備投資予定「ある」企業が
4年ぶりに前年比を割る
2024 年度の設備投資に関する企業の意識調査(出典 帝国データバンク)
企業の事業拡大や業務の効率化など、未来の利益を見越した成長には設備投資が欠かせない。政府としても、国際競争力強化を目的にした大規模な設備投資に対して補助金を投じ、中小企業の自動化やGXの推進などにも投資支援を行っている。だが、今年は設備投資を行う企業が減少傾向にあるようだ。
帝国データバンクは、2024 年度の設備投資に関する企業の意識について調査を行い、全国の 1万 1,222 社から回答を得た。それによれば、2024 年度に設備投資を行う予定(計画)が『ある』と答えた企業は 58.7%と、2023年4月の前回調査よりも1.8ポイントダウンし、4 年ぶりに前年を下回った。また、設備投資を「予定していない」と回答した企業は 33.1%で、前回調査から 2.0 ポイント上昇した。
2024 年度の設備投資に関する企業の意識調査(出典 帝国データバンク)
最も多い理由は景気の不安。
原材料価格の上昇や賃上げの影響も
2024 年度の設備投資に関する企業の意識調査(出典 帝国データバンク)
設備投資を「予定していない」企業の回答の理由は「先行きが見通せない」が 44.1%で最も高かった。以下、「現状で設備は適正水準である」(26.9%)や「投資に見合う収益を確保できない」(21.4%)、「借り入れ負担が大きい」(13.8%)、「手持ち現金が少ない」(13.5%)と続き、景気の不安を根拠とする回答が目立つ。
「2024 年度は設備ではなく人材に投資したい」との声もあり、昨今の賃上げ状況を考慮して、人的投資と設備投資に優先順位を付けて実施している模様だ。
大企業は積極的な傾向
平均投資額も前年より高い
2024 年度の設備投資に関する企業の意識調査(出典 帝国データバンク)
また、設備投資の予定のありなしは企業規模にも差が見られる。設備投資の予定(計画)が『ある』企業を規模別にみると、「大企業」ではコロナ禍以前(2019 年 4 月実施)の調査を上回る設備投資が予定されているものの、企業規模が小さくなるほどその割合は小さくなっていた。
2024 年度の設備投資に関する企業の意識調査(出典 帝国データバンク)
『ある』企業の設備投資予定額は平均で 1 億2,705 万円1(前回調査 1 億 2,470 万円)となり、前回調査から 200 万円ほど増加。設備投資の内容については、入れ替えや交換、更新など「設備の代替」が 58.9%と2 年連続で 5 割を上回り、トップとなった。次いで「既存設備の維持・補修」(29.8%)や省人化なども含む「省力化・合理化」(25.7%)、「DX」(24.8%)、「情報化(IT 化)関連」(22.2%)が続いた。「情報化(IT 化)関連」「DX」のいずれかを選択した、デジタル投資を検討している企業は 37.4%と、前回調査からやや低下したものの 、4 割近くの企業で業務の効率化、AI などの新しいシステム導入への投資を進めていることがわかる。
2024 年度の設備投資に関する企業の意識調査(出典 帝国データバンク)
設備投資に関する資金調達方法については、「自己資金」が 57.1%で最も高か
った。さらに、金融機関からの「長期の借り入れ」(22.0%)や「短期の借り入れ」(6.7%)を含む金融機関からの調達は 28.7%。自己資金と金融機関からの借り入れが資
金調達の 8 割超を占めている回答結果であった。
折からの原材料の値上げによる建設費用の上昇や、金利の利上げの動向、急速な円安などによる投資費用の増加で、設備投資は抑制傾向にある。また、当初の計画の変更、見直し、足踏みをするケースが今後増えていくと見られている。
DATA
取材・文/本多祐介