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日本ロジスティクスシステム協会が2024年問題の実態調査 荷主と物流事業者のあいだで認識の違い

日本ロジスティクスシステム協会は、2024年問題についての実態調査を実施した。関連する業界で認知度が高いものの、荷主と物流事業者のあいだで認識の違いも見受けられた。

2024年問題が
いよいよ現実に

2024年4月からトラックドライバーの時間外労働が年間960時間までという上限規制が適用された。この影響で、輸送能力不足などさまざまな問題が発生することが懸念されている。荷主にとっては輸送を断られる要因となり、消費者も当日・翌日配達の宅配サービスを受けられなくなる可能性があるなど、影響は多岐にわたる。

2024年問題に対応するため政府は昨年6月、「物流革新に向けた政策パッケージ」を公表した。さらに、同パッケージに関する具体的な取り組みを示した「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」が経済産業省・農林水産省・国土交通省の連名で示された。

日本ロジスティクスシステム協会が
関連業界の実態調査

2024年問題対応に向けた実態調査(出典 日本ロジスティクスシステム協会)

物流革新のための施策について、今後は法制化を含めた枠組みの整備が進められ、併せて各企業の対応が求められる。日本ロジスティクスシステム協会(JILS)は、各企業の認識や取り組み状況、さまざまな影響、課題などを把握するため、「物流変革の波:2024年問題対応に向けた実態調査」を実施した。

調査方法はJILSのメールマガジンに登録している発着荷主(製造業、流通業)・物流事業者を対象に、アンケートへの回答を依頼した。調査は2023年8月10日~24日にかけて行われ、310社から回答があった。

荷主と物流事業者のあいだで
認識に差異

政策パッケージのなかで関心が高い取り組み(出典 日本ロジスティクスシステム協会)

調査の結果、2024年問題に対する認知度に加えて、政策パッケージ・ガイドラインについても認知度が高く、特に製造業の把握・理解度が高いことが明らかになった。また、2024年問題には物流部門だけでなく、ロジスティクスやサプライチェーンといった領域での取り組み・解決が必要と認識されていることもわかった。その反面、予想される事業への影響は物流領域の範囲にとどまるという回答が多く、売り上げや利益といった全社的なKPI(重要業績評価指標)への言及は少なかった。

運賃や料金、ドライバー賃金も含めた輸送費に関しては「運賃と料金の分離」や「標準運賃」の取り組みが進みつつある。しかし、荷主と物流事業者の間で認識の差異も見受けられた。

荷待ち・荷役時間の削減については、製造業・物流業で問題意識が高く、流通業では比較的低い結果になった。さらに、流通業ではドライバーの平均待ち時間が他業種と比較して高いため、早急な対応を求められることになりそうだ。

多重下請けに対する課題認識
物流業と製造業・流通業で差異

多重下請け構造に対する課題認識(出典 日本ロジスティクスシステム協会)

2次請け・3次請けへと業務を流していく多重下請けに関しては、物流業で課題として認識されていることがわかった。それに対して製造業や流通業の意識は低く、「物流波動の吸収や安定的な輸送のためには、一定の多重下請け構造はやむを得ない」という回答もあった。

物流管理統括者の設置については、「課題と感じる意識」、「取り組み」ともに進んでいないことがうきぼりとなった。物流管理統括者には「現状の役員や物流統括者を充てる」という回答が目立ち、CLO(物流担当役員)の配置はあまり検討されていないことが明らかになった。

いよいよ現実のものとなった2024年問題。その影響を最小限に抑えるためには、関連する業界が足並みを揃え、共通認識としてそれぞれの課題に取り組むことが求められる。

DATA

日本ロジスティクスシステム協会
「物流変革の波:2024年問題対応に向けた実態調査」調査結果の公表


取材・文/椚山啓治

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