2024年問題に対応 経産省が「自動配送ロボット活用の手引き」を作成
2024/03/25
インターネット通販の市場拡大などによって宅配の需要が増すなか、物流の現場でも人手不足が深刻化している。その対策の参考資料として、経済産業省が「自動配送ロボット活用の手引き」を作成した。
トラックドライバーが不足
物流の「2024年問題」
道路貨物運送業の運転従事者数の推移(出典 日本ロジスティックシステム協会)
道路貨物運送業の運転従事者数は減少し続けており、物流分野では人手不足が深刻になっている。3年後の2027年にはトラックドライバーが約24万人不足し、2030年には物流需要の約34%が運べなくなるとの試算もある。
さらに、働き方改革関連法の適用により、2024年4月からトラックドライバーなどの時間外労働時間の上限が制限される。その影響で物流が滞ることが予想されており、物流の「2024年問題」と呼ばれている。
その対策の1つとして、早朝や夜間など、特に人手が不足しやすい時間でも稼働できる自動配送ロボットの活用が注目されている。経済産業省は今年2月、自動配送ロボットの活用をより一層推進するため、「自動配送ロボット活用の手引き」を発行した。
「自動配送ロボット活用の手引き」は、(1)本手引きと自動配送ロボットについて、(2)自動配送ロボットにまつわる FAQ、(3)自動配送ロボット活用までのプロセスとアクション、(4)自動配送ロボットの活用事例集、(5)関係法令及び参照すべきマニュアル等の5部構成となっている。
自動配送ロボットの
活用推進を目指して
用途が広がる自動配送ロボット
第1章と第2章では、自動配送ロボットの仕組みや活用方法などを説明している。自動配送ロボットは、物流拠点などからさまざまな荷物や商品を配送するロボットのことを指す。種類によって性能は異なるが、最大積載量25~100kg程度で、1回の充電で数時間~1日稼働できるものが多い。
これまで、自動配送ロボットの活用に関しては、走行ルールや安全性などさまざまな点について検討されてきた。2022年に発足した一般社団法人ロボットデリバリー協会は、自動配送ロボットの安全基準やガイドラインを策定している。
また、昨年4月に「道路交通法の一部を改正する法律」が施行され、長さ120cm以下、幅70cm以下、高さ120cm以下の大きさで、最高速度が6km/h以下、非常停止装置を備えたロボットは「遠隔操作型小型車」として、公道を走行することが可能になった。
自動配送ロボットを活用してサービスを始める際には、使用するロボットの機体料金の他、ロボット用のマップ作成費や経路設定費、充電や待機スペースの確保費、テスト走行費などがかかる。また実際に運用する際には、ロボットの遠隔操作、事故時の駆け付け、メンテナンスなどにかかる人件費や保険料などの費用が発生する。
自動配送ロボットによる
課題解決に期待
宅配便取り扱い個数の推移(出典 国土交通省)
自動配送ロボットに期待されていることは、人手不足への対応の他にもある。1つは急増する宅配需要への対応だ。現在、インターネットショッピングに代表される物販系BtoC-EC市場は規模の拡大が進んでおり、宅配便の取り扱い個数も増加している。物流拠点などからの配送に自動配送ロボットを活用することで、2030年度には50億個を上回る物量に対応できるようになると見込まれている。
もう1つは、買い物弱者への対応だ。近年、自宅から店舗まで500m以上離れていて、自動車の利用が困難な65歳以上の「食料品アクセス困難人口」が、地方のみならず大都市においても増加している。自動配送ロボットの活用によって、地方公共団体による住民への買い物支援といった行政サービスが期待されている。
この他にも、オフィスへ食品や商品を運ぶ、公共施設に書類や機材を運ぶなど、自動配送ロボットは多くの事業者や自治体でさまざまな分野での活用事例がある。今後、自動配送ロボットの社会への導入は、ますます進みそうだ。
DATA
取材・文/ダブルウイング