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IT導入補助金で約9億5000万円分の不正受給 会計検査院が調査

中小企業のIT導入を支援する独立行政法人 中小企業基盤整備機構の補助金について、会計監査院が調べたところ、架空取引やキックバックなど不適切な事案が約9億5000万円にも上ることが確認された。10月21日付けで中小企業庁長官、独立行政法人中小企業基盤整備機構理事長に対し、改善の措置を求めている。

IT導入補助金
2019年度にスタート

会計検査院は、合規性、有効性などの観点から、中小企業などによる生産性向上に資するITツールを導入する事業は、「交付規程などに沿って適正に行われているか」「事務局による各種審査、交付決定の取り消しなどは適切に行われているか」などについて検査を行った。

実地検査を行ったのは、一般社団法人「サービスデザイン推進協議会(サ推協)」が事務局を務めていた2022年度までの3年間に補助対象となった約10万社の10万4000事業のうち、376社の445事業(交付額 計12億1000万円)が対象。

検査の結果

1)IT導入補助金を過大請求(ITベンダーが中小企業と共に虚偽申請)。
2)不正受給(ITベンダーが紹介料などの名目でキックバック/1億812万円/41件)。
3)機構やサ推協は、相当数の不正の疑義を把握していたが、一度も立ち入り調査を実施しなかった。
4)101事業主体の114事業でI Tツールを解約したのに辞退届が未提出。
5)255事業主体の271事業で、数値を誤って報告など。
6)ITベンダー側からの資金提供は認められなかったものの、虚偽申請で不正受給していた企業が8社(交付額は計約2800万円)など。

架空取引やキックバックなど、不適切な事案が約9億5000万円分にも上ることが確認された。

立ち入り調査の実施方法や
指針の整備を求める

IT導入補助金の交付手続きの主な流れ(出典 中小企業庁)

「IT導入補助金」は、ITツール導入を対象にかかった経費の一部を補助する。中小企業の生産性向上などを後押しする狙いで、19年度に独立行政法人「中小企業基盤整備機構(中小機構)」の所管事業として始まった。

図の緑色で示された「IT導入支援事業者」は、事務局に登録されたソフトウエア会社やシステム開発会社などのITツールベンダー(販売業者)だが、ツールの導入や事業計画の策定支援、交付申請の取りまとめ、ITツールのアフターサポートを行うだけでなく、中小企業の補助金申請までをサポートする。

<IT導入補助金の対象となるもの>
・在庫や物流を管理するシステム
・総務や人事、給与の支払いなどを管理するソフトウエア
・インボイス(適格請求書)の制度に対応した会計ソフトやパソコン
・サイバーセキュリティー対策のソフトウエア ……など。

不正に関わったと会計検査院が認定した15のITベンダーの支援事業者数は、1978事業、58億2891円にも上る。この15の不正ベンダーについて、今年7月に登録を取り消し、事務局が8月にウェブサイトで公表した。

また、不正への関与が判明したITベンダーの登録を取り消すほか、立ち入り調査の実施方法や指針を整備することも求めた。会計検査院は、サ推協や中小機構に対し、過大に交付していた企業からは速やかに補助金を返還させるよう求めている。

DATA

会計検査院法第34・36条の規定による処置要求
サービス等生産性向上IT導入支援事業の実施状況について

取材・文/脇谷美佳子

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