注目キーワード

業界トピック

溶接の未来が変わる!協働ロボでスマート生産

精密板金加工業界では、技能者不足が深刻化し、溶接工程の自動化が求められている。そんな中、ユニバーサルロボットの協働ロボットを導入した3社が、省力化と生産性向上を実現。本記事では、各社の導入事例を通じて、ロボット技術がもたらす業界の変革と未来の可能性を探る。

精密板金加工業界では、技能者の高齢化や人材不足が深刻化し、溶接工程の自動化・省力化が急務となっている。そのような状況の中で、ユニバーサルロボット(UR)の協働ロボットを導入し、生産性向上を実現した企業が注目を集めている。URの協働ロボットは、従来の産業ロボットと異なり、プログラミングが容易であり、限られたスペースでも設置が可能だ。今回、株式会社北上製作所(岩手県)、株式会社タカノ(長野県)、株式会社長尾製作所(大分県)の3社が、URの協働ロボットを導入し、溶接工程の最適化に成功した。本記事では、それぞれの企業の導入事例を詳しく紹介し、精密板金業界の未来におけるロボット活用の可能性について考察する。

以下、Universal Robots ASのプレスリリースより

精密板金加工業 3社が溶接工程の自動化・省力化に成功

Universal Robots AS
2025年2月27日 13時00分

業界課題の技能者不足対策にユニバーサルロボットの協働ロボットを導入

ユニバーサルロボット(本社:デンマーク、日本支社:東京都港区、代表:山根 剛、以下「UR」)は、株式会社北上製作所(岩手県北上市)、株式会社タカノ(長野県松本市)、株式会社長尾製作所(大分県佐伯市)が、URの協働ロボット(以下「URロボット」)を導入したことを発表します。
溶接は、自動車、産業機械、建築・建設、鉄鋼・非鉄金属等の様々な産業分野を支える重要技術ですが、その担い手となる後継者層 (20代~40代の溶接技能者)は年々減少(※2)しています。
また、溶接作業は、高温・高圧の環境下で行われるため、事故や労働災害のリスクを最小限に抑えるための安全対策や労働環境整備も求められています。このような課題解決のために、溶接工程へのロボット導入ニーズは急速に高まっています。
上記の三社が導入したのは、URロボットを組み込んだ自動化装置を開発・販売するOEMパートナーである (株)ファブエース(本社:神奈川県横浜市)のTIG溶接支援ロボットシステム「Co TIG Welders」(※1)です。同社は溶接工程の自動化・省力化を必要とする全国の精密板金加工企業に対して販売サポートを展開しており、多数の実績を誇ります。

(※1)TIG溶接支援ロボットステム
TIG溶接は、ステンレス、アルミ、鉄等のほとんどの金属溶接において、火花が飛び散らない安全性の高い溶接手法。
TIG溶接支援ロボットステムは、URロボット、安全マットやシグナルライトなどTIG溶接に必要な機器をパッケージ化したシステム。URロボットに搭載された「ダイレクトティーチング」機能により、ロボットを扱った経験のないオペレータでも容易に溶接作業の設定ができるため、ロボットへの教示時間は従来型産業用ロボットに比べ大幅に削減され、少量多品種の生産工程にも展開可能。
(※2)一般社団法人日本溶接協会 統計資料 https://www-it.jwes.or.jp/statistics/index.jsp

株式会社北上製作所、株式会社タカノ、株式会社長尾製作所のURロボットソリューション導入事例概要については以下の通りです。

【北上製作所 協働ロボット導入で、作業環境改善と作業時間の半減に成功】

<導入課題>
北上製作所は1990年に創業。精密板金加工を軸に産業機械や食品関係機械、医療機器などの部品を製造しており、現在、工場機械の自動化を推進しています。一方、導入した産業ロボットは操作習得に時間を要するという課題がありました。
<導入効果>
・レーザー溶接に専用機を導入すると稼働率低下を招くが、TIG溶接とレーザー溶接を切り替えて自動化できる協働ロボットを活用することにより、設備の稼働率を向上。
・また、ロボットプログラミング経験がない作業者も、ロボットが使えるようになり、溶接工程の業務効率向上に貢献。
・さらに、粉塵が舞い、作業環境も厳しいサンディング工程は、従来、熟練工が時間をかけて作業しており業務を圧迫していたが、URロボットの導入により、作業環境改善と作業時間の半減に成功。
・これにより、熟練の作業者が他の作業を行えるようになり、溶接作業全体の業務効率も改善。
<導入製品>
UR5eまたはUR10eを搭載したTIG溶接支援ロボットシステム 「Co TIG Welders」
<事例URL>
https://www.universal-robots.com/ja/case-stories/kitakami-manufacturing/

【タカノ 作業自動化と平準化により、多品種生産にも対応できる生産体制を確立】

<導入課題>
タカノは1972年に創業。鉄やステンレス、アルミなどの精密板金加工を行い、医療機器や工作機械、プリンタや液晶パネルの部品などを製造しています。タカノは、現在、フレーム加工を増産しており、より多くのリソースと専門人材確保という課題があり、溶接工程の自動化と溶接業務の平準化を合わせて進める必要がありました。
<導入効果>
・TIG溶接工程に協働ロボットを導入して溶接作業を自動化、作業者は前後工程の段取りを並行して行うことで工程全体の生産性が向上。従来、作業者の手作業で2日かかっていた業務を1日で完了。
・また、ロボットシステムの安全機能により、ロボット周辺作業スペースのコンパクト化(簡易パーティ
ションを用いるだけ)に成功。
・溶接作業の自動化により、熟練作業者のキャパシティを確保でき、多品種生産にも対応できる生産体
制づくりと増産に成功。
<導入製品>
UR10eを搭載したTIG溶接支援ロボットシステム Co TIG Welders
<事例URL>
https://www.universal-robots.com/ja/case-stories/takano/

【長尾製作所 初心者には溶接を楽しく簡単に、熟練技術者には付加価値業務を】

<導入課題>
長尾製作所は1977年に創業。精密板金加工を主軸に、半導体、食品加工、鉄道業界と主に取引を行っています。特に精密な薄物溶接を得意としており、この職人の技術を新たな社員にいかに継承し、生産能力向上をさせるかが目下の課題となっていました。一方、こうした課題解決のためにロボット導入も検討していましたが、ティーチングや操作習得などが作業現場の負担になるという懸念がありました。
<導入効果>
・溶接作業の一部をロボットに任せることで、熟練技術者に、より付加価値の高い業務に専念できる
環境を提供。
・ロボットプログラム経験のない従業員が、約1カ月の教育でプログラミングや操作方法について習得。
・溶接作業の難易度の高さに挫折することが多かった初心者に「溶接の面白さ・楽しさ」を訴求。
・簡単・安全なロボットシステムの導入により、未経験者や外国人の活用可能性が広がり、安定した人材確保を実現。
<導入ソリューション>
UR5e を搭載したTIG溶接支援ロボットシステム Co TIG Welders
<事例URL>
https://www.universal-robots.com/ja/case-stories/nagao-manufacturing/

【ユニバーサルロボットについて】
ユニバーサルロボット(UR)は、協働ロボットの先駆者であり、リーディングカンパニーです。
2008年に世界初の商用協働ロボット(アーム型ロボット)を発表した当社は、その後も製品ポートフォリオを拡充するとともに、直感的なインターフェースと多様な機能を備えた独自のソフトウェアである PolyScope を進化させてきました。さらに、サードパーティー製周辺機器群である UR+ をはじめとした、販売代理店、認定システムインテグレータ、およびURロボットを組み込んだ装置を販売するOEMパートナーで構築されるグローバルなパートナーエコシステムを構築。これにより、ユーザーが自動化の導入時に直面する複雑さやコストといった課題を解決し、誰もが容易に自動化を実現できる環境を提供しています。
現在、ユニバーサルロボットは米Teradyne Inc. 傘下の企業として、デンマーク(オーデンセ)に本社を置き、日本を含む世界20ヵ国に支社を構えています。これまでに世界50か国以上で90,000台(累計)を超える協働ロボットを世界中に販売しています。

https://www.universal-robots.com/ja/

【URパートナーエコシステム】
ユニバーサルロボット(UR)は、最先端の協働ロボットの開発を進めると同時に、ユーザーが自動化の導入時に直面する複雑さやコストといった課題を解消するため、2016年に協働ロボット用周辺機器のオープンソース型開発プラットフォームUR+を業界に先駆けて開発しました。以降このプラットフォームは年々拡大・進化しており、UR+適合製品数は500を超えています。
さらに、URロボットの販売サポートを行う代理店、ユーザーの課題を解決する協働ロボットシステムを構築する認定システムインテグレータ、およびURロボットを組み込んだ装置を開発販売するOEMパートナーの拡充も進め、2024年時点で1200社を超えました。これらのエコシステムパートナーと共に、「自動化をあらゆる人に、あらゆる場所で」という当社のミッションを実現すべく世界中のユーザーの自動化の取り組みを支援しています。

引用:https://prtimes.jp

ロボット導入が切り拓く製造業の未来

溶接技能者の減少が進む中、精密板金加工業界では、ロボットによる自動化が企業の競争力を左右する時代に突入した。今回紹介した3社の成功事例は、協働ロボットがもたらす生産性向上や作業環境の改善を示す好例である。URロボットの導入により、作業の平準化や熟練工の負担軽減が実現し、少量多品種生産にも柔軟に対応できるようになった。今後も、こうしたロボット技術の活用が進めば、製造業全体の生産性向上につながる可能性が高い。本メディアでは、今後もロボット技術や自動化の最新動向を追い続け、業界の課題解決に貢献する情報を発信していく。

関連記事

ロボットテクノロジー
ロボットテクノロジー

アクセスランキング

  1. Nexa Ware、AGV物流パッケージを提供開始
  2. 国の「ロボット新戦略」から10年。海外製ロボットの革新に日本はどう立ち向かうべきか。...
  3. 三菱電機、富士通、パナソニック 電機大手3社が過去最高益 2024年3月期連結決算...
  4. 【参加受付中!】2025年6月10日(火)「第34回PVビジネスセミナー」
  5. 製造業向けロボット市場 2028年には2兆円を突破
  6. 製造装置・工作機械の世界市場 2028年には1.5倍以上と予測
  7. 政府が事業者向けの統合版「AIガイドライン」を策定 人間中心など10原則...
  8. 生成AI関連の国内市場 2028年度には23年度比12倍以上に拡大
  9. 低コスト協働ロボット「ReBeL」が日本市場で2024年、本格販売開始
  10. 国土交通省 物流施設DX推進実証事業費補助金の2次公募開始

フリーマガジン

「FACTORY JOURNAL」

vol.04|¥0
2024/12/20発行