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人手不足が過去最高に迫る コスト高で賃上げ進まず

コロナ禍が落ち着き、経済活動の正常化が進んだ結果、今年1月は人手不足が過去最高に迫る水準となっている。人材確保のため待遇の改善を検討するものの、原材料のコスト高などのため、賃上げに踏み切れない企業も多い。

経済活動の正常化で
人手不足が深刻化

人手不足に対する企業の動向調査(出典 帝国データバンク)

数年にわたり経済にも影響を与えてきた新型コロナウイルス感染症が、2023年5月に感染症法上の5類に移行した。人の動きが回復し、経済活動が本格化したことにより、サービス業などを中心に人手不足が深刻化している。

帝国データバンクは今年1月に全国の大企業と中小企業、合わせて2 万7308 社を調査し、そのうちの1 万1431社から回答を得た。それによると、10業界51業種のうち、正社員が「不足」していると感じる企業は52・6%で、過去2番目に高い数値となった。非正社員の「不足」を感じる企業は29・9%で、前年から横ばいとなっている。人手不足を理由とする倒産は2023年には260件と、2013年以降最多となっており、人手不足が企業の経営に与える影響は大きい。

サービス業、建築、運輸で
人手不足感が高まる

                  

人手不足に対する企業の動向調査(出典 帝国データバンク)

人手不足の割合を業種別にみると、正社員ではIT企業を中心とした「情報サービス」が過去最高の77・0%となった。システムの開発や刷新、設備投資などを進める企業が増えており、高まる需要に人材の供給が追いつかないという声が多く聞かれる。2位となった「建設」 では、首都圏を中心とした再開発やリニア中央新幹線などの大型プロジェクトを進めるため、求人が増えている。

非正社員では「飲食店」が72・2%で、人流回復の影響を感じさせる。人手不足の高まりから、「人材派遣・紹介」も求人が増えており、派遣人材が不足している。正社員・非正社員とも3位の「旅館・ホテル」は、インバウンド需要の高まりが目立つ。

製造業は上位10業種に入っていないが、人手不足により事業を継続できない企業が各業種で増えている現状を考えても、無関心ではいられないだろう。

「2024年問題」により
物流コストの上昇も

人手不足に対する企業の動向調査(出典 帝国データバンク)

働き方改革関連法の適用を受け、建設・物流・医療業などで、2024年4月から時間外労働の上限規制が始まる。これは「2024年問題」と呼ばれ、人材不足を長時間労働で補うことができなくなるため、物流が滞るなどの影響が指摘されている。

トラックドライバーなどの労働時間が規制されることにより、車両で運べる量が減るため、物流コストは上昇が見込まれる。さらに、労働時間の減少から収入減となり、離職するトラックドライバーが増える可能性も指摘されている。正社員では、物流業の企業の72%が既に人手不足を感じていて、2024年4月以降はより一層深刻化することが予想される。

コスト高で賃上げに
踏み切れない企業も

人手不足に対する企業の動向調査(出典 帝国データバンク)

人材の確保・定着に、「賃上げ」は有効な手段の1つだ。2023年には人手不足を感じている企業で賃上げを実施したケースが多く、2024年もその傾向は続くとみられている。正社員の賃上げについて、人手が「不足」している企業では65・9%が実施する見込みと答え、人手が「適性」「過剰」である企業より10ポイント以上高かった。

しかし、原材料やエネルギーなどのコストが上長しているため、賃上げが難しいという企業も多い。また、大企業がベースアップしたことによって、賃上げを実施しても人材確保に思ったほどの効果がないケースもあるという。

人手不足を感じる企業が多い中、賃上げによる人材獲得競争は激化していくと予想される。企業は、どのように人材を確保していくのか、有効な手段を継続的に考えていく必要がありそうだ。

DATA

帝国データバンク 人手不足に対する企業の動向調査(2024年1月)


取材・文/ダブルウイング

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