搬送・物流用ロボットが日本の「2024 年問題」に立ち向かう
2024/02/15
2024年3月末まで猶予されていた「物流・運送業界の働き方改革」が、間もなく発効され、「2024年問題」が目前の課題として迫っている。産業ロボットの生産台数が世界第2位を誇る日本は、産業用ロボットやサービスロボットによって優れた自動化ソリューションを提供してこの課題に立ち向かう。
時間外労働の上限規制
今年4月に施行
2024年4月1日以降、トラックドライバーの時間外労働時間の上限が年960時間に制限される。そのことによって発生する諸問題が「物流2024年問題」だ。
ドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることで、起こり得る問題を以下にまとめた。
<「2024年問題」で起こり得る問題>
・ドライバー1人あたりの走行距離が短くなる
・長距離でモノが運べなくなる
・物流・運送業界の売上が減少する
・荷主の運賃上昇による商品への価格転嫁
・トラックドライバーの収入の減少
・ドライバーの離職
・物流の停滞
また、一般消費者にとっても、当日・翌日配達の宅配サービスが受けられない可能性のほか、新鮮な食品(水産品、青果物など)が手に入らなくなることも考えられる。
搬送・物流用ロボット導入により
5つの課題を解決
労働時間が短くなることで、輸送能力が不足し、モノが運べなくなる可能性が懸念されているが、2024年問題に対して、何も対策を行わなかった場合、営業用トラックの輸送能力が2024年には14.2%さらに2030年には34.1%不足する可能性があると試算している。
そこで解決のカギを握るのが、搬送・物流用ロボットだ。どのような可能性を秘めているのだろうか。
1 積み下ろしの負担を軽減
輸送・物流分野向けの自立走行搬送ロボットがトラックや倉庫からの貨物の積み降ろしの負担を軽減する。
2 労働時間数が最大25%削減
トラック運転手を貨物の積み降ろしの作業から開放することで、1日のシフトあたりの労働時間数が最大25%削減される。
3 ヒューマンエラーの削減
ピッキングや梱包などの反復作業をロボットによって自動化することにより、注文履行における人為ミスを防ぐことにつながる。
4 ロボットによる倉庫作業の迅速化
すでに倉庫では、小型の自律走行搬送ロボットから大規模な自動倉庫システム(ASRS)まで各種ロボットが用いられているが、貨物の移動にかかる時間を短縮する。
5 労働者の安全確保
人間の労働力をリスクにさらすことなく、重量物や危険物を取り扱うことができる。
産業ロボットとサービスロボットは
優れた自動化ソリューション
日本は、産業ロボット市場において中国に続いて世界第2位の生産台数を誇る。2022年における日本の搬送・物流用ロボットの販売台数は、86,000台超に伸長し、世界全体で44%の売上増を記録した(IFRのレポート)。世界的に見ても、貨物・積荷搬送用の産業仕様サービスロボットの生産台数は、他の用途向けに比して急増している。
国際ロボット連盟の伊藤孝幸副会長は、「政府により新たに課された時間外労働の上限規制は、従業員の労働環境の改善に向けた重要なステップです。産業用やサービスロボットは優れた自動化ソリューションとして、つらく単調な危険作業から労働者を解放し、生産性のギャップを埋めるのに役立ちます」と話す。
最新の統計でも、搬送・物流用ロボットのメリットは裏付けられており、世界的に見ても、貨物・積荷搬送用の産業仕様サービスロボットの生産台数は、他の用途向けに比して急増している。「2024年問題」の課題解決において、搬送・物流用の産業ロボットへの大きな期待が寄せられている。
DATA
数字で見るロボット業界 ― 世界の自動化競争に関する統計に関する動画
取材・文/脇谷美佳子