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生産IoT対応工場を実現させる現場力の強化 ノウハウをブラックボックス化させない仕組みづくりとは?

山口県下関市のひびき精機は、IoT対応の無人化工場を建設するため、中小機構のハンズオン支援を活用した。ベテラン職人のノウハウと作業ルールをマニュアル化して伝承の仕組みを構築し、若手社員にも仕事を任せられる環境整備を実現した。

CASE02 ひびき精機(山口県下関市)

製造現場の業務改善が
大きな課題


超薄肉精密切削加工を施した製品。(出典:ひびき精機)

ひびき精機は、1967年創業の金属部品加工メーカー。ステンレスやアルミ、チタン合金などの超薄肉精密切削加工で全国トップクラスの技術力を誇り、半導体の製造装置部品や航空宇宙関連部品などの製造を手がける。難しい形状や難加工材料であっても加工方法の検討提案を図り、コストダウンやVE提案を積極的に行い、多品種少量生産にも対応する。

生産性向上を目指してIoT対応無人化工場の整備を進めており、そのための生産基盤である現場の業務改善が大きな課題となっていた。「働き方改革」や「生産性向上」に向けて、ひびき精機の松山英治社長が導入を検討していたのが「TPM(トータル・プロダクティブ・メンテナンス)」。TPMとは、生産システム上に存在するあらゆるロスをゼロにすることで、継続的に生産性向上、収益の確保を実現する活動に取り組むこと。中小機構のハンズオン支援を開始したのは2017年12月。大手自動車メーカーで生産現場の業務改善を担当したアドバイザーが派遣され、IoT対応無人化工場の建設に向けて、TPMの導入による現場力の強化を目標に掲げた。

業務改善が進むにつれて
自ら考える集団に


第3工場のIoT対応自動化装置。(出典:ひびき精機)

ハンズオン支援では、ベテラン、中堅、若手の8名によるプロジェクトチームが中心となって、現状把握と課題整理を行った。その結果、「現場のソフト・ハードの業務の改善・整備の必要性」、「特定製品において生産トラブルの分析・改善が不十分」、「技術・ ノウハウの伝承や人材育成が進んでおらず業務にバラツキが発生」などの課題が浮き彫りとなった。アドバイザーの指導のもと、ベテラン職人を含めたプロジェクトチームのメンバーが課題を掘り下げ、業務改善の優先順位について月に2回のペースで議論を進めていった。

チームのメンバーが議論を重ね、業務改善が進むにつれて、これまで上司から言われたことを粛々とやっていたスタッフが自ら考える集団に変わっていった。プロジェクトリーダーの光貞徹製造部長は、「これまで現場社員は社外から学ぶ機会も少なく、改善手法も各個人の自己流でした。日常業務に忙殺され活動が停滞する時期もありましたが、アドバイザーが来社される毎月の活動日に向けて何とか課題を前進させるのは、良い緊張感がありました。今後も改善風土の定着を進めていきたいと考えています」と活動の成果を強調する。

2020年6月に
5G通信の無人化工場が完成

ひびき精機は2020年6月、5G通信を利用したシステム化によるIoT対応無人化工場の操業を開始した。新工場では高速・大容量、低遅延、多接続などローカル5Gの特性を生かし、高精細カメラでの遠隔監視や工作機械の遠隔操作を実施している。

松山社長は、「ハンズオン支援のおかげで不具合発生が50%以上削減され、利益率が飛躍的に向上しました。社員の改善への意欲と生産性向上が大きな成果です。意識が変わり行動が変わり会社が変わる。常に進化を続ける。そんな可能性を感じております」と笑顔をみせた。


FACTORY JOURNAL vol.1(2024年冬号)より転載

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