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品川区は中小企業とともに前へ。DX・脱炭素化を通じて事業成長のマインドを醸成

早くから、中小企業の自動化やDX化を支援してきた東京都品川区。脱炭素化を目指す普及啓発にも力を入れている。事業成長に向けて希望を持ってほしいという、根底にある強い思いを取材した。

<目次>
1.人材不足の対応を急ぐ中でも事業成長に向けたマインドを
2.Q1. 製造業における脱炭素化の現状は?
3.Q2. スマートファクトリー化の手応えは?
4.Q3. 中小規模の製造業が抱える課題は?
5.Q4. 今後の脱炭素化の展望は?
6.Q5. 中小企業の支援にかける思いは?

 

人材不足の対応を急ぐ中でも
事業成長に向けたマインドを

品川区は、区内の中小規模のものづくり企業に向けて、業務効率化やDX化に関する支援を行っている。昨今、多くの企業が人手不足への対応に追われるようになっているという。品川区地域産業振興課中小企業支援の担当者は、「近年、特に人材不足が深刻化していると感じています。以前は生産性の向上が最大のテーマでしたが、現在は、いかに限られた人数で効率よく業務を行うかが重要視されています」と指摘する。

こうした背景から、DXやデジタル技術の導入を支援する助成制度の人気が高まっているという。作業の見える化やペーパーレス化を進めることで、業務効率を上げたいというニーズがある。「デジタル技術活用推進助成金という補助制度で事務作業などのデジタル化を支援していますが、予算額を超える多くの応募が集まっています」と手応えを語る。

今後は、脱炭素化に関する普及啓発にもさらに力を注ぎたいと話す。「取引先からCO2排出量の開示を求められている企業を除いて、脱炭素化をまだ自分事ととらえられていない企業が大半だと感じています。なぜ脱炭素化に取り組まなければならないのか、その理由をしっかり“腹落ち”するまで納得してもらうことが何より大切です。そのために、効果的な普及啓発をこれからも続けていきたいと考えています」。

区の担当者は、新型コロナ禍で打撃を受け、物価高騰にも直面する今、いかに希望を持ったマインドを醸成するかも重要だと強調する。「多くの企業が極めて大きな影響を受け、事業を継続するために努力や工夫を重ねています。この先、事業拡大や新規参入のチャンスをつかむには、まず、前向きなマインドを持ってもらうことが必要だと考えています。そのために、ものづくり企業の皆さんと一緒に取り組みを深めていきます」と前を向く。

Q1. 製造業における脱炭素化の現状は?

A. 自分事にするところからスタート
取引先から脱炭素化への取り組みを求められている企業を除いて、これから取り組みを始める企業がほとんどだ。業界によって意識に違いがあるものの、「なぜ脱炭素化に取り組む必要があるのか」、「取り組むメリットは何か」といった疑問を抱えている企業が多い。

Q2. スマートファクトリー化の手応えは?

A. 見える化やペーパーレス化が進展
2019年度から作業省力化やDX、デジタル技術の導入を支援しており、見える化やペーパーレス化が着実に進んでいる。さらなる計画の立案や具体的なアクションに移っている企業が多く、今後はそれらの深化、継続を支援するステップになる。

Q3. 中小規模の製造業が抱える課題は?

A. 最大の悩みは人手不足の深刻化
もっとも大きな課題として、昨今の人手不足の深刻化が挙げられる。DXや自動化に取り組むことで、限られた人数でいかに効率よく業務を進めるかについて考えている企業が多い。脱炭素化に関しては、専門知識の不足も課題になっている。

Q4. 今後の脱炭素化の展望は?

A. 普及啓発を根気強く続けていく
まず、脱炭素化の背景や意義、便益を理解してもらうため、引き続き、普及啓発活動に力を注いでいく。脱炭素化を自分事ととらえてもらい、企業価値の向上につながると納得できれば、おのずと取り組みが進むと考えている。

Q5. 中小企業の支援にかける思いは?

A. 前向きなマインドで背中を押したい
新型コロナ禍によって経営に大きな打撃を受けた中小企業が少なくない。現在は経営を回復する時期だが、企業に前向きなマインドを持ってもらうことが大前提。これからまた事業を拡大し、新たなチャンスをつかめるという希望を持ってもらえるように、一緒に取り組んでいきたい。

DATA

品川区地域産業振興課
地元のものづくり企業の競争力を高めるため、19年度から自動化装置・ロボットの導入やDX化を包括的に支援している。中小企業への支援策をまとめた専用のWEBサイトでは、業種やキーワードで企業検索ができる他、さまざまな情報を発信している。


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

FACTORY JOURNAL vol.4(2024年冬号)より転載

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