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2024年中国の主要FAロボット市場 緩やかに回復して6.1%増の見通し

富士経済は、中国のFAロボット市場の今期予測をまとめた。需要の低迷が底を打ち、比較的安価な製品を中心に中国メーカーが伸長して、2024年は前年比6.1%増と見込んでいる。

2023年は低迷した中国経済
2024年に回復の見込み

中国市場はアジア市場の8割近くを占めており、世界最大規模の市場である。これまで中国市場は、人手不足や人件費の高騰などを背景に拡大を続けてきたが、2023年は縮小した。

2023年の中国経済は、前年に続いて、スマートフォン関連の需要の低下や、車載バッテリー関連の設備投資の低迷もあり、低迷を見せていた。主要FAロボット(スカラロボット、垂直多関節ロボット、協働ロボット)の分野でも、中国市場は、2022年の1兆227億円を約654億円下回り、前年比6.4%減の9573億円となっていた。

主要FAロボットの中国市場

主要FAロボットの中国市場(出典 富士経済)

2024年は、需要の低迷が徐々に解消され、市場の緩やかに回復していくと予想されている。現在、日本においても有効求人倍率が全地域で1を超えるなど、世界中の国や地域で人手不足や人件費の高騰が深刻な問題となっており、中国も例外ではない。こういった人手不足を背景として、ロボットによる自動化のニーズは高く、ロボット市場は今後拡大する見込みである。

これらを背景に、富士経済は2024年5月に中国のFAロボット市場について調査を行い、その結果を「中国市場でのプレゼンスを高めるローカルロボットメーカー対抗策に関する考察」にまとめた。

中国ロボット市場
海外メーカーが8割 中国メーカーも伸長

中国市場では、外資系メーカーが8割以上を占めており、特に、ファナックや安川電機、セイコーエプソン、ヤマハ発動機などの日系メーカー、ドイツのKuka、スイスのABBなどが挙げられる。また、中国メーカーもEstun、Inovance、JAKA、AUBOなどを中心に実績を伸ばし、シェア上位にランクインする中国ロボットメーカーも散見されるようになってきている。

中国では、2015年に「中国製造2025」を定め、次世代情報技術や高度な工作機械・ロボットなどの10の重点分野と23の品目を設定して、製造業の高度化を進め、「世界の製造強国の仲間入り」を目指す政策を進めている。

これまで、中国メーカー製ロボットは品質面に不安があったが、これらの政策などを背景にして、中国では中国メーカーによるロボット開発やユーザーの導入に対して補助金制度を設けるなど、国家戦略として製造業の高度化進めており、作業精度や耐久性などの改善を進めている。

また、中国政府は、国内の製造業事業者に対して、中国メーカー製の設備導入を推奨しているため、今後も中国メーカーのシェアが高まっていくと予想される。

ローエンド領域で特に目覚ましい
中国メーカーの伸長

ロボットのグレード別では、比較的安価なローエンドの領域で中国メーカーの進出が目覚ましい。中国は、国家戦略として製造業の高度化進めており、中国メーカーの技術力の向上により、将来的にミドルレンジ領域でも外資系メーカーとの競争が発生すると予想される。

外資系メーカーは、廉価機種の開発やハードウェア・ソフトウェアの共通化などを行い、価格競争力を高め、同時に、性能による差別化や付加価値提案の強化、サポートの充実などの対抗策を打つ必要が出てくると考えられる。

中国市場は、アジア市場の8割近くを占め、世界最大規模の市場であり、新型コロナウイルスが流行して以降、ロボット等の需要が急増している。今後も中国市場の動向を注視していく必要があるだろう。

DATA

世界の製造業向けロボット市場を調査


取材・文/ダブルウイング

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