注目キーワード

業界トピック

【物流2024年問題】製品サイズの見直しで荷役時間と待機時間を短縮

トラックドライバーの年間の時間外労働時間が制限されることに伴う物流2024年問題。物流が直面する社会課題の解決に向けての注目の取り組みをリポートする。

日清製粉ウェルナ
ロジスティクス変革の最前線


2023年8月から冷凍食品のパッケージと段ボールのサイズを見直し(出典 日清製粉グループ)

日清製粉グループの日清製粉ウェルナは、パレットへの積載効率を高めた上でパレット輸送への転換を図り、トラックドライバーの拘束時間を短縮することを目的に、2023年8月から順次、冷凍食品のパッケージのサイズ見直しを始めた。一口にサイズの見直しと言っても、その作業は決して単純なものではなかった。パッケージのサイズを変更するには、工場の生産設備から製品の輸送設備まで、ミリ単位での改造が伴うからだ。パッケージのサイズ変更の対象となった冷凍食品は、ワンディッシュパスタなど100商品以上。上下で袋を封じ、切断するタイプの「ダブルピロー包装」の全製品とダンボールが対象となった。

見直し作業の中で多くの時間を要したのは、パッケージの最適なサイズを見出す作業だったという。関係者が一丸となってさまざまな検証を経た結果、7工場の設備の変更と、パッケージの仕様が確定した。サイズの変更そのものは、今春までに概ね完了している。冷凍商品業界の輸送においては、手作業で商品をトラックに積み下ろしする「バラ積み・バラ下ろし」が商習慣として根付いている。

パッケージサイズを変更し
トラック輸送を効率化

日清製粉グループ

段ボールに詰めた製品(出典 日清製粉グループ)

パレットを使っていても、物流事業者や物流拠点によって複数のパレットサイズが混在していること、冷凍食品業界で共通した流通プラットフォームがないことなどから、パレットの普及が進んでおらず、輸送の効率を改善することは長年の課題とされていた。そこに、いわゆる「物流2024年問題」が立ちはだかったことで、冷凍食品の輸送でもパレットを活用して荷役作業の効率を上げることが急務になった。

しかし、パレットを導入するだけでは、パレットの分だけ製品の積載量が減り、使用するトラックの台数が増えてしまう。そこで、日清製粉ウェルナは、パッケージのサイズを変更することで、パレットを使った輸送に切り替えても、積載数量を落とさずに輸送できるようにした。これによって、トラックドライバーの荷役時間や待機時間を短縮する効果が期待できる。実は、パッケージのサイズを変更しても、使用するトラックの台数は変わらないため、輸送コストの削減などは望めない。しかし、物流2024年問題という社会課題の解決に向けた取り組みとして、他の冷凍食品メーカーや取引先などから注目されている。

常温の食品に関しては、食品物流の課題に対して食品メーカー6社※が協働で検討する「F-LINEプロジェクト」を通じて、同社は参加メーカーらと連携して取り組みを進めている。北海道への輸送では、カゴメ、ハウス食品と海上での共同輸送を始めた。関東・中部間の幹線輸送では、中間の静岡県でカゴメと中継リレーを実施するなど、共同輸送できるルートのプロジェクト検討を進めている。

※味の素株式会社、カゴメ株式会社、日清オイリオグループ株式会社、株式会社日清製粉ウェルナ、ハウス食品グループ本社株式会社、株式会社Mizkan


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

FACTORY JOURNAL vol.2(2024年夏号)より転載

関連記事

物流

アクセスランキング

  1. 三菱電機、富士通、パナソニック 電機大手3社が過去最高益 2024年3月期連結決算...
  2. 三菱総研がDX推進状況を調査「3年間でビジネス変革の伸びが鈍化傾向」
  3. 政府が事業者向けの統合版「AIガイドライン」を策定 人間中心など10原則...
  4. 2024年中国の主要FAロボット市場 緩やかに回復して6.1%増の見通し
  5. 【特別対談】ITを活用して、日本の製造業の強化に寄与したい ~FlexSimの世界No.1ディストリビューター ゼネテック~...
  6. 製造業向けロボット市場 2028年には2兆円を突破
  7. 国内のDX投資、2030年度には2.3倍に ビッグデータ分析や生成AIに注目集まる...
  8. 企業の設備投資が4 年ぶりに低調 コスト高と景気の先行きの影響か
  9. 低コスト協働ロボット「ReBeL」が日本市場で2024年、本格販売開始
  10. 搬送・物流用ロボットが日本の「2024 年問題」に立ち向かう

フリーマガジン

「FACTORY JOURNAL」

vol.02|¥0
2024/6/19発行