自家消費型太陽光発電のメリットを探る 導入の課題と業者選びのポイントは?
2024/01/23
太陽光発電で20%相当の電力を賄い、 パネルの遮熱効果で省エネにも成功。FIT売電から始めて、自家消費型に行きついた理由とは?群馬県のめっき工場 「エルグ」の事例には、太陽光発電導入のヒントが満ちている。
太陽光発電を導入したエルグの管理棟。左奥は初めにパネルを設置した第2工場。
FIT売電から自家消費へ
電気代&CO2削減を実現
工場経営において、いまや欠くことのできないテーマとなっている太陽光発電設備の導入。しかし、その目的や背景は様々だ。ここでは、群馬県富岡市でめっき加工を行っているエルグの事例を紹介する。同社は、なぜ太陽光発電設備を設置しているのか? そして、太陽光発電に取り組むにあたり、もっとも重要なこととは? 代表取締役社長(工学博士)の桐原聡二郎氏に聞いた。
株式会社エルグ 代表取締役社長(工学博士)
桐原聡二郎氏
「当社では、まず2020年3月、FIT(固定価格買取制度)を使って、第2工場の屋根に66㎞の太陽光パネルを設置しました。そして、2023年12月、管理棟の屋上に、新たに約100MWの太陽光を導入しました。今回はFITでの売電は行わず、発電した電気はすべて自社で使用する自家消費型にする計画です。これに合わせて、初めに導入した第2工場の太陽光も、FIT売電から自家消費型に変更しました」(桐原氏)。
FIT売電から自家消費へ――この流れは、太陽光発電のトレンドともいえるものだ。エルグの取り組みは、全国の工場オーナーの参考となるところだろう。
「今回、すべての太陽光発電設備を自家消費型にした理由は、大きく分けて2つあります。1つめは、電気代の削減です。電気料金の高騰が続くなか、売電するよりも自家消費をして、電力会社から買う電力量を減らした方が経済的メリットが大きいと判断しました。太陽光発電により、工場と事務所で使う電力の約20%が賄えると試算しています。ピークカットにより最大デマンドも抑えられますから、大きな電気代削減効果を得ることができるでしょう。
2つめの理由は、CO2削減です。同じ太陽光発電でも、FIT売電という運用の仕方では、制度上、当社がCO2を削減しているとは認められません。一方で、自家消費型太陽光であれば、CO2削減が認定されます。今日では、取引先やお客様から、脱炭素への取り組みについて尋ねられることも増えてきました。企業の社会的責任に応え、お客様に対しても脱炭素に貢献する姿勢を明確に示したいと考え、自家消費型太陽光にこだわりました」(桐原氏)。
太陽光発電と建築物
両方のプロが求められる
自家消費型太陽光発電設備には、FIT売電型にはない難しさがある。これについて、エルグの太陽光発電設備を手掛けた建築舎ボンズハウスの代表取締役・中野敏彦氏は言う。
「工場に自家消費型太陽光発電設備を導入する場合、まずはその工場の電力需要 (デマンドデータ)を分析し、最も費用対効果が高くるなるようシステム設計する必要があります。需要に合わせて発電側を制御することも必須であり、エネルギーマネジメント全体から考えていかなければなりません。
また、自家消費型太陽光発電設備は、基本的に、屋根上に設置するものです。しかも、エルグさんのように、既存の建屋に設置するケースが多くなります。そうなると、屋根の強度など、設置する建物の診断も必要です。自家消費型太陽光発電設備を手掛ける事業者には、太陽光のことだけでなく、建築のことも熟知していることが求められるのです」(中野氏)。
太陽光発電と建築――両方に精通していること。それは、まさに建築舎ボンズハウスの強みでもある。同社は、群馬県を中心に首都圏で約200mmの太陽光発電導入実績を有するとともに、一級建築士事務所として数多くの建物を建設してきた。エルグの桐原氏も、「どんな相談事にも一気通貫で迅速に応えてくれる」と、建築舎ボンズハウスの総合力を高く評価する。
太陽光パネルの遮熱効果で
複合的なコストメリット
じつは、エルグが太陽光発電を導入した元々の狙いは、太陽光パネルによる“遮熱”にあったのだという。相談を受けた建築舎ボンズハウスが、遮熱の最大化を前提に構築したシステムが、いま屋根上に載っているものだ。「太陽光発電そのものの電気代削減効果と、太陽光パネルの遮熱による省エネ効果により、ダブルでコスト削減ができる」と、桐原氏は頬を緩める。
半導体検査装置に使われる部品など、微細品のめっきでは日本有数の技術力を誇るエルグ。同社の工場内には、高熱を発するセクションもあり、冷房効率の向上が大きな課題だった。従来は、屋根に散水もしていたが、十分な効果は得られなかったという。それに比べて、太陽光パネルで物理的に日光を遮断する効果は思いのほか大きいのだ。エルグでは、今春完成予定の技術棟にも、発電と遮熱という二重のメリットを期して、太陽光パネルを設置する計画を立てている。
「太陽光発電設備の導入により、当社の課題は着実に解消されつつあります。 太陽光、とくに自家消費型においては、発電のことに止まらない、広範な知見を有する事業者をパートナーに選ぶことが大切だと実感しています」と桐原氏。
建築舎ボンズハウスとしても、市場環境や政策動向を見据えつつ、蓄電池やEVとの連携など、課題解決に向けたソリューションを幅広く提案していく方針だ。同社には、太陽光発電設備機器・資材の輸入を担うエネフィックスというグループ会社もあり、高品質な最新機種をリーズナブルに提供できる体制も整っている。エルグと建築舎ボンズハウスのコラボレーションが、どんな成果を生み出すのか注目していきたい。
「これまでに携わらせていただい太陽光発電設備の設計・施工・O&Mの経験と、建築に関する豊富なノウハウを活かして、地域の事業振興や気候危機の解決に貢献していくことができれば幸いです」(中野氏)。
PROFILE
建築舎ボンズハウス株式会社
代表取締役社長
中野 敏彦氏
問い合わせ
建築舎ボンズハウス株式会社
群馬県高崎市箕郷町下芝 466-7
TEL:027-393-6066
株式会社エネフィックス
群馬県高崎市箕郷町下芝 466-7
TEL:027-393-6726
写真/松尾夏樹
取材・文/廣町公則
FACTORY JOURNAL 創刊号より転載
Sponsored by 建築舎ボンズハウス株式会社