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企業の後継者確保は改善が進む、事業承継は「脱ファミリー化」が加速

企業の後継者確保は全国規模でみると改善が進んでいて、事業承継は「脱ファミリー化」の傾向が強まっていることがわかった。一方で、後継者不足による倒産や黒字廃業の問題も依然としてあり、M&Aでのトラブルの表面化という新たな課題も浮上している。

<目次>
1.後継者不在率は改善されるも改善幅は鈍化傾向
2.50代・60代で後継者不在率が悪化改善度合いは地域によって濃淡も
3.2024年の事業承継は親族承継にこだわらない方向へ
4.円滑な事業承継に向けた今後の課題と問題点

 

後継者不在率は改善されるも
改善幅は鈍化傾向

全国の全業種のうち、事業承継の実態について分析可能な約 27 万社を対象に調査した結果、後継者が「いない」「未定」とした企業の割合は52.1%で、前年(2023年)から1.8 ポイント低下し、7年連続で前年の水準を下回ったことがわかった。

調査以来、過去最高水準だった2017年の65.5%と比較すると13.4ポイントも低下しており、後継者不在問題の改善は進んでいる。しかし、この数年の改善幅ペースは鈍化傾向にあるという懸念材料も見てとれる。

「後継者不在率」推移(出典 帝国データバンク)

後継者不在率が改善した背景には、2つの理由が考えられる。
① 事業承継に関する官民の相談窓口が全国に普及
② 自治体や地域金融機関などの呼びかけで、事業承継の重要性が広く認知され浸透した

一方、改善のペースが鈍化している背景としては次の要因があげられている。
① 経営環境の急激な変化により事業承継を中断
② 現代表者による後継者選びの見直し
③ 後継者候補だった人物の辞退や退社

事業承継が中断・頓挫した要因はさまざまだが、特に高齢での事業承継では中断や白紙となるリスクがより高い傾向にあるようだ。

50代・60代で後継者不在率が悪化
改善度合いは地域によって濃淡も

代表者の年代別に傾向を見ていくと、全年代でもっとも後継者不在率の減少幅が大きかったのは70代(28.5%、1.3ポイント減)で、30 代(81.8%、1.1ポイント減)でも後継者不在率が低下した。一方、50 代(60.4%、0.4ポイント増)や60 代(37.8%、0.1ポイント増)は後継者不在率が悪化した。

年代別 後継者不在率推移(出典 帝国データバンク)

都道府県別では、全国でもっとも後継者不在率が低いのは三重県で34.1%、逆にもっとも高いのは秋田県で全国平均を大幅に上回る 72.3%だった。また、業種別でもっとも不在率が高かったのは建設業(59.3%)で、最も低いのは製造業(43.8%)となっている。

業種別 後継者不在率推移(出典 帝国データバンク)

2024年の事業承継は
親族承継にこだわらない方向へ

以前は、子どもなどの親族に事業承継を行う割合がもっとも高く、それを望む経営者も多かった。しかし2024年の速報値段階では、血縁関係のない役員や社員に事業承継させる「内部昇格」によるものが 36.4%にまで達し、「同族承継」の32.2%を上回った。

その他、M&Aなどによる事業承継が20.5%、社外の第三者を代表として迎える「外部招聘」が7.5%となっている。こうした傾向からも、親族承継にこだわらない「脱ファミリー化」に舵を切る動きが強まっていることがわかる。

代表者・就任経緯別 推移(出典 帝国データバンク)

また、後任代表者(後継者)の 業界や経営経験の有無を分析した結果、業界経験が10 年以上ある後任代表者 が8割超を占めたものの、経営経験の有無については3年未満が59.0%で最も割合が高かった。

一方で、業界経験と経営経験の両方が豊富な外部人材が後任代表者に就任する割合も増えており、ベテランの社長経験者などの人材を後継候補として求める傾向もみられた。

円滑な事業承継に向けた
今後の課題と問題点

後継者候補を決めた企業が増加している一方、黒字経営でも事業承継は望まず、自分の代で廃業することを決断する高齢の代表者も多い。また、後継者がおらず倒産に追い込まれる「後継者難倒産」について、2024年の件数は過去最多だった 2023 年の同期と同水準で推移している。経営環境の悪化、後継者育成の頓挫、後継者候補の辞退、代表者の病気・死亡など、さまざまな要因により事業継続を断念するケースが目立っている。

近年では、そうした場合の有効な事業承継の手段としてM&Aによって会社を売却(譲渡)するといった選択も増加している。しかし、買い手企業の給与遅配や税金未納、さらには売り手企業の経営者の個人保証が解除されないといったトラブルが表面化している現実もあるため、後継者不在率の動向とともに今後の動向を注視していく必要があるとしている。

DATA

全国「後継者不在率」動向調査(2024年)(帝国データバンク)


取材・文/脇谷美佳子

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