次世代物流システム・サービス コストメリットが高い施設に導入が進む
2025/03/11

2024年の次世代物流システム・サービス国内市場は拡大が予想される。その一方で、導入コストが高いため、費用対効果が出にくく、まずはコストメリットが高い24時間稼働の宅配、通販、食品などの物流施設へ導入が進むとみられる。
国内市場の規模は
2023年比で9倍以上に
富士経済「2024年版 次世代物流システム・システムの実態と将来展望」
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済は、人手不足がさらに顕在化する「2030年問題」の解決に向け、ロボティクス、AI、IoTなど先端技術を活用したシステムの導入が進む「次世代物流システム・サービス市場」を調査した。
物流センター内の工程の多くは、いまなお依然として人手による作業が多い。なかでも複雑な作業は「ピッキング工程」である。プログラミングやティーチングが膨大するから、ロボット導入は敬遠されてきた。しかし、AIを組み合わせることで、瞬時に状況判断を行い、マスターレスでピッキングが可能となったことから、自動化を推進する大規模物流センターを中心に導入が進んでいる。
また、2023年には物流業界の課題であったトラックドライバーによるトラックコンテナからの荷卸し(デバンニング)・荷積み(バンニング)を自動化するデバンニングロボットが投入され、作業の効率化につながっている。
次世代物流ロボットシステム市場(出典 富士経済)
24年の次世代物流システム・サービス国内市場は参入企業が増加しているほか、案件が実証実験から本格導入へ移行していることから、拡大が予想される。その一方で、導入コストが高いため、費用対効果が出にくく、まずはコストメリットの高い24時間稼働の宅配、通販、食品などの物流施設などへ導入が進むとみられる。そうしたなかで、注目されていのが、デバンニングロボットを含む次世代物流ロボットシステムである。
次世代物流ロボットシステムとは、ビジョンシステムと垂直多関節ロボット、ハンド・グリッパ、AGVなどを組み合わせて、荷卸し・荷積み(ピッキング、パレタイジング、デパレタイジング、バンニング、デバンニングなど)を行う物流向け知能化ロボットシステムを対象としている。
日系メーカーによる海外販売はまだ少ないが、人件費が高い北米やオセアニアなどでの展開が進むことで、30年の市場規模は23年と比較して日系メーカー海外販売は約50倍へと拡大が予想されている。総合的に見ると、日系メーカー海外販売を含む国内市場の規模は2030年には417億円、2023年比で9倍以上へと拡大すると予測されている。
国内市場の規模
2024年見込みと将来予測
次世代物流システム・サービス市場(出典 富士経済)
― 2030年国内市場予測(2023年比) ―
●バース管理システム 163億円(5.1倍)
直近では2024年問題への対応で急伸、以降も拡大続く
●次世代物流ロボットシステム 317億円 (7.4倍)
AI技術の活用でピッキングやデバンニングの自動化が進み、伸長
●WMS(倉庫管理システム)457億円(57.6%増)
バース管理やTMSなど倉庫外のソフトウェアとの連携によるサプライチェーン最適化に期待
●屋外無人搬送車 9億円(150%)/2030年予測 100億円
AGVをはじめとした物流ロボットの製品認知度向上による導入拡大や参入企業の増加により、工場の建屋間搬送や屋外の搬送においても、自動化を検討する事業者が増加し、注目度が高まっている。これまで課題となっていた屋外での安定した自律走行についても3D LiDAR SLAMの活用により走行性能の向上が進んでおり、国内市場が拡大している。
●WMS(倉庫管理システム) 335億円(105.3%)/2030年予測 497億円
倉庫内の物流の正確性とスピードアップが可能なことから注目されている。慢性的な人手不足に加え、ECの普及による多頻度配送や小口化、オペレーションの複雑化などから、倉庫内の自動化機器の導入が進み、需要が増加している。「2024年問題」対策の一環としての中継拠点の開設や、レガシーシステムの更新などにより、2024年の国内市場は拡大が予想され、今後も物流センターの新設や拠点間の集約などにより、伸びが続くとみられる。
●WES(倉庫実行システム) 22億円(157.1%)/2030年予測 140億円
物流センターの新設が相次ぎ、自動化設備の導入が進んだことにより、市場が拡大している。参入企業の増加も続いているほか、カスタマイズ要求も高く、案件規模も大型化していることから、今後も市場は拡大が予想される。
●バース管理システム 54億円(168.8%)/2030年予測 163億円
2024年問題を背景に生産性の向上や長時間労働の解消に向けた取り組みが活発化。トラックドライバーの待機時間や入出荷作業負担の増大、荷待ちトラックによる渋滞など、従来からの課題を解決し、効率化するシステムとして需要が高まっている。今後は、予約や管理だけではなく、外部システムとの連携によって倉庫内外の効率化を図るようなシステム提案が増えていくと予想される。
DATA
2024年版 次世代物流ビジネス・システムの実態と将来展望
www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html
取材・文/脇谷美佳子