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外国人技能実習の新制度、政府の最終案を自民特別委が了承 国会提出へ

外国人技能実習制度を廃止して、新たに「育成就労制度」の創設に向けた政府の最終案が2月5日、自民党の特別委員会で了承された。関係閣僚会議の決定を経て、今国会への関連法案の提出を目指す。

育成就労制度を
新たに創設

政府は、昨年11月に有識者会議が最終報告書をとりまとめたことをうけて、制度の見直し案を検討していた。最終報告書では、同一企業で1年以上就労すれば転職を認める内容を盛り込んだ。しかし、転職の要件を緩和することについて、自民党内に地方からの人材流出などを懸念する声が相次ぎ、調整が難航していた。

政府の最終案では、現行の技能実習制度を廃止して、新たに「育成就労制度」を設け、基本的に3年で一定の水準に育成するとしている。その間に、より技能レベルの高い「特定技能1号」の水準に育てることを目指す。

その後の試験などを経て熟練労働者である「特定技能2号」になれば制限なく在留資格を更新でき、家族の帯同も可能になる。「特定技能2号」は、長年の実務経験などにより身につけた熟達した技能で、たとえば自らの判断により高度に専門的・技術的な業務を遂行できる、または監督者として業務を統括しつつ、熟練した技能で業務を遂行できる水準のものを指す。新たな制度では、一定の条件を満たせば永住権も申請できるようになり、高度専門職などに移行できる。

転職を認める条件
日本語要件を厳格化

現行の制度は人材育成による国際貢献を目的としているため、本人が希望する転職は原則として認めていない。政府の最終案では、転職について日本語能力の要件を厳格化する。最終報告書では、転職を認める条件として日本語能力A1相当以上の試験合格を提言した。しかし、自民党内に語学能力の引き上げを求める意見があることから、政府は日本語能力A1相当からA2相当の中間レベルに要件を引き上げた。能力向上を評価する新たな試験の導入を検討する。

転職の制限期間
1~2年で設定可能に

転職を制限する期間は、自民党内の慎重な意見に配慮して、当分の間は職種ごとに1年から2年の範囲内で設定可能とした。転職の支援は、悪質なブローカーを排除するため、ハローワークなどの公的機関のみで行うこととし、民間事業者の関与は当分の間認めない。今後、公明党にも了承されれば、政府は関係閣僚会議を開いて正式に決定し、今国会への関連法案の提出を目指す。

外国人技能実習制度は、途上国から実習生を受け入れ、技術を持ち帰ってもらう「国際貢献」の名目で、1993年に始まった。受け入れ対象は、当初の17職種から90職種に拡大している。在留期間も、制度開始時の2年間から5年間に延びた。昨年6月末時点で実習生は、全国に約35万8000人。国籍別ではベトナムが最多で51.8%、次いでインドネシアが16.3%、フィリピンが8.9%、中国が8.1%などとなっている。

技能実習生の在留状況(2023年6月)

出典:法務省

技能実習生の国籍別構成比(2023年6月)

出典:法務省


取材・文/高橋健一

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