製造工場の脱炭素化の課題とその乗り越え方とは? 環境省の政策担当者に聞く
2024/07/12
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、企業や自治体などのさまざまな主体による徹底した省エネ、省CO2化が不可欠となっている。製造工場の脱炭素化には、どのような課題があるのか?その課題の乗り越え方とは? 環境省地球温暖化対策事業室の峯 健介氏に話を聞いた。
経営層の理解が
脱炭素化のポイント
――工場・事業場の脱炭素化の課題とは?
峯 工場・事業場の脱炭素化における課題は、事業者の状況によって多岐にわたります。中小企業におけるポイントは、脱炭素化に取り組む意識を醸成すること、特に、経営層が脱炭素化の重要性をより理解することだと考えています。脱炭素化はビジネスチャンスになること、取り組まないことが経営リスクにつながることを認識してもらうことで、脱炭素化の促進につながると思います。近年、大手企業の間では、バリューチェーン全体でのCO2排出量を削減することが至上命題となっています。取引先へCO2排出削減計画の提出を要請したり、削減対策の実施を求めたりする動きは、今後ますます強まっていくでしょう。
そうした動きの中で、適切なパートナーシップに基づいてバリューチェーン全体を脱炭素化し、競争力強化に結びつけていくことが重要です。そのために、中小企業の皆さんには、自社のCO2排出量を把握するところから始めてほしいと思います。
――環境省で実施しているサポートは?
峯 脱炭素化に対する意識を醸成するために、環境省は工場・事業場における脱炭素化のノウハウや優良事例を共有するためのセミナーを開催しています。また、取引先企業と連携してバリューチェーンの脱炭素化を図るモデル創出を目的に、SHIFT事業のメニューの1つとして、昨年度から企業間連携先進モデル支援を創設し、支援を行っています。
脱炭素に取り組み
他社との差別化を図る
――工場・事業場を持つ企業に期待することは?
峯 カーボンニュートラルの達成に向けては、各社の取り組みの積み重ねが重要です。しかし、「脱炭素化=我慢・追加負担」では持続的でないと感じます。例えば、設備を使用していないときには電源を切るなど、すぐに取り組める省エネもあります。まずは、こうした取り組みから始めていただきたいと思います。こうした省エネ活動は、経費の節減による経営改善にも直結します。
また、脱炭素化にいち早く取り組むことで他社との差別化を図り、競争力の強化に成功した事例や、脱炭素化に役立つ新製品の開発やリサイクルなどによって、新たなビジネスの機会を得た企業もあります。若い世代には地球温暖化やSDGsに敏感な人も多いため、脱炭素化への取り組みは、リクルートの面でもメリットがあると考えられます。環境省では、さまざまな支援を通じて、皆さんと一丸となって2050年カーボンニュートラルに向けて進んでいきたいと考えています。
Profile
峯健介(みね・けんすけ)
2012年4月 国土交通省入省(東北地方整備局配属)
2014年4月 国土交通省水管理・国土保全局下水道部へ異動
2018年4月 川崎市上下水道局下水道計画課へ出向
2021年4月 地方共同法人日本下水道事業団関東・北陸総合事務所へ出向
2023年4月 環境省地球環境局地球温暖化対策課地球温暖化対策事業室へ出向(現職)
取材・文/山下幸恵(office SOTO)