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【米国シリコンバレーから現地レポート】これが脱炭素の最前線だ!

世界のテック企業が集積するシリコンバレー。脱炭素の最先端を追って、シリコンバレーを訪れた筆者が感じたままにレポートする。

メイン画像:サンフランシスコのダウンタウンでは、自転車をはじめ、電動キックボードや電動バイクのステーションが至る所で見られる。

街並みに溶け込む脱炭素
次なる「定着」のステージ

「名だたるIT企業が集うシリコンバレーとは、いったいどのような場所なのだろう」と胸を高鳴らせながら、サンフランシスコのダウンタウンでBARTという列車に乗り込んだ。1時間ほど南へ下り、シリコンバレーの中心地へ向かう。シリコンバレーは、サンフランシスコ湾の沿岸地域・ベイエリアに位置し、アップルなどの巨大なテック企業が軒を連ねる。しばらく揺られると、壁いっぱいにテスラのロゴが描かれた工場が見えてきた。モデルSやモデル3など4車種がここで生産されている。

去年9月、アップルは原材料調達から廃棄まで、ライフサイクルを通じてカーボンニュートラルな製品を初めて発売した。2018年に自社で使う電気をすべて再エネ化し、どうしても減らせないCO2排出量をオフセットするなどして実現したとしている。対象的な脱炭素戦略をとるアドビは、排出量の相殺を一切行わず、2035年に100%再エネ電気を達成するために、省エネの徹底に取り組んでいる。シリコンバレー最南端・サンノゼの本社ビルには、エネルギー使用量を見える化するセンサーが3万種類以上取り付けられているという。


路面電車、トロリーバス、ケーブルカーなどの公共交通機関で使う電気の約半分は、ヨセミテ国立公園にある水力発電所から調達している。

ベイエリアの公共交通を担うサンフランシスコ市交通局も脱炭素に力を注ぐ。同市のCO2排出量は4割超が輸送部門によるものだ。中国のEV大手・BYDなどから12台の電動バスを導入して、バスの電動化を推し進めている。自転車や電動キックボードの利用も盛んで、あちこちに自転車などのステーションが整備されている。 

脱炭素化の取り組みが街並みに溶け込むシリコンバレーだが、その方向性は日本と同じだ。重要なことは、いかに脱炭素化を定着できるかにあるのではないかと感じた。


竣工50年超のトランスアメリカ・ピラミッドなど、古い建物が現役で活躍中。カリフォルニア州は建築物の省エネ化にも力を注ぐ。

【編集後記】
大企業などによる脱炭素化が進む一方で、築年数の経過した建物の中には、古い空調設備などをそのまま使っているところも多くあった。既存の建築物の脱炭素化は、シリコンバレーでも日本でも大きな課題かもしれない。残念ながら、坂の街を力強く走る電動バスに乗ることは叶わなかったが、次回は乗り心地を体感したい。

取材・文:山下幸恵(office SOTO)

FACTORY JOURNAL vol.1(2024年冬号)より転載

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