愛媛製造業のDXが加速!「トライアングルエヒメ2.0」キックオフイベントが示す未来戦略
2026/08/13
愛媛県が推進するデジタル技術実装プロジェクト「トライアングルエヒメ2.0」が、2026年度のキックオフイベントを開催した。本プロジェクトは、県内産業の生産性向上と競争力強化を目指し、多岐にわたる分野でデジタル技術の実装を推進。製造業の経営課題解決に向けた具体的な成果と、共創による新たな価値創造への期待が高まっている。
愛媛製造業のDXを牽引する「トライアングルエヒメ2.0」が始動
人手不足、熟練技能の継承問題、そしてサプライチェーンの強靭化。日本の製造業が直面するこれらの課題に対し、DX(デジタルトランスフォーメーション)はもはや不可欠な経営戦略である。
単なるデジタル化にとどまらず、企業文化の変革と新たな付加価値創出を目的としたDX推進は、地域経済の活性化にも直結する。
愛媛県が推進するデジタル技術実装プロジェクト「トライアングルエヒメ(TRY ANGLE EHIME)」は、まさにこの変革の旗手である。
事業開始から5年目を迎え、この度2026年度のキックオフイベント「TRY ANGLE EHIME KICKOFF 2026」が開催された。
本プロジェクトは、デジタル技術を県内産業へ実装し、地域課題の解決と「稼ぐ力」の創出を目指す取り組みであり、これまでに農林水産業、ものづくり、海事、観光など幅広い分野から137件のプロジェクトを採択。その共創の輪は着実に広がり、愛媛の産業競争力向上に貢献している。

愛媛県知事が語る、DXが拓く地域産業の未来
2026年7月23日に愛媛県庁官民共創拠点「E:N BASE」で開催されたキックオフイベントには、約180名が参加した。開会にあたり、中村時広愛媛県知事は、デジタル化の波に乗り遅れないための施策として、若手職員を中心にプロジェクトチームを立ち上げ、人材育成やスタートアップ支援を進めてきた背景を説明した。
愛媛県の産業構造は、南予地域の一次産業、東予地域のものづくり産業、中予地域の三次産業と多岐にわたる。知事は、これらの産業に全国のデジタル企業が持つ技術を掛け合わせることで、愛媛県全体の産業競争力向上につなげたいとの考えを示した。
また、愛媛県を実証フィールドとして提供し、企業の技術を県内で実装することで地域課題の解決につなげるとともに、企業の成長も後押ししていく姿勢を強調した。

現場の課題を解決する採択プロジェクトの具体例
2026年度に採択された38件のプロジェクトの中から、代表事例として継続採択2社、新規採択1社による発表が行われた。これらの事例は、製造業が抱える具体的な課題に対し、デジタル技術がどのように「答え」を提示するのかを明確に示している。
【継続採択】Noahlogy株式会社 × 株式会社新来島どっく:造船特化型AIエージェントによるテクニカルネゴシエーション効率化
昨年度、AIを活用した造船設計業務の効率化に取り組んだNoahlogy株式会社は、今年度、船主との技術的な仕様調整(テクニカルネゴシエーション)を支援するAIエージェントの開発に挑む。
専門知識を要する調整業務をAIで効率化することは、設計・営業部門の負担軽減と生産性向上に直結する。これは、熟練技能の属人化が進む製造現場において、人がより付加価値の高い業務に集中するための省人化の好例と言えるだろう。

昨年度の実施内容・成果はこちらで確認できる。
【継続採択】Xsym株式会社 × ジャスティン株式会社:複合センシング・物理AIによる品質検査デジタル化プロジェクト
2025年度に多品種(小型)工業製品の検査自動化で成果を出したXsym株式会社は、今年度、その技術を重厚長大産業である造船分野へと拡張する。
複数のセンシング技術と物理AIを組み合わせることで、造船現場における検査業務のデジタル化を推進。検査品質の向上、作業時間の短縮、そして現場の省力化を実現し、深刻な人手不足への対策として期待される。

昨年度の実施内容・成果はこちらで確認できる。
【新規採択】株式会社ZAICO × 福助工業株式会社:在庫関連業務のAIによる業務軽減・自動化プロジェクト
AIを活用して在庫管理や棚卸し業務を効率化するこのプロジェクトは、担当者の負担軽減と業務の標準化を図る。製造現場の生産性向上に直結するこの取り組みは、DXが現場に定着し、具体的な成果(ROI)を生み出す可能性を示している。

令和8年度採択企業・プロジェクト一覧(一部抜粋)
令和8年度は、継続採択16件、新規採択17件、共創拠点枠5件の計38件のプロジェクトが採択された。ものづくり分野では、AIを活用した電気設計図の設計・検図自動化、生産設備特化型AIエージェントによる業務効率化、ものづくり企業の生産管理最適化など、多岐にわたるDX推進が図られている。
海事産業では、AIを活用した船舶の安全運航補助や生産性向上プロジェクトが進行中である。これらのプロジェクトは、製造業の経営層が抱える人手不足、生産性向上、コスト削減といった課題に対し、具体的な解決策を提示している。
共創が生み出す新たな価値と未来への展望
イベント後半には、採択事業者や県内企業、関係者が交流するネットワーキングが実施された。
参加者は、軽食やドリンクを楽しみながら、それぞれの取り組みや課題について意見を交わし、活発な情報交換が行われた。採択分野ごとの交流会では、同じ分野の企業同士はもちろん、異なる業界や技術を持つ参加者同士の連携も模索され、新たな出会いが生まれるなど、トライアングルエヒメならではの共創の可能性を感じる時間となった。

「トライアングルエヒメ2.0」は、多彩な分野の企業とデジタル企業が連携し、新たな実装プロジェクトをスタートさせた。これらの取り組みは、愛媛県内の産業や地域課題の解決だけでなく、日本製造業全体のレジリエンス(強靭化)と持続可能な成長に貢献するだろう。今後の展開が、製造業の未来を切り拓く鍵を握る。
- 詳細レポートは公式noteでも公開されている。
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編集:ファクトリージャーナル編集部






