【新しい製造業のリーダーズ】次世代の旗手たちが導く「燕三条 工場(こうば)の祭典」。KOUBAが描く燕三条の新たな未来
2025/09/02

単なる産業観光イベントを越えた、文化と地域の未来を見据えた視点に満ちた「燕三条 工場の祭典」。地元に根ざしながら、地域や業界の垣根を越えて多様な価値観を取り入れる柔軟な視点を持つリーダー、秋元哲平氏。
メイン画像:写真左より燕商工会議所青年部会長・佐野哲郎、燕三条工場の祭典実行委員長・秋元哲平、燕三条工場の祭典専務理事・結城靖博、三条商工会議所青年部会長・山田賢(敬称略)
2013年にスタートした
燕三条 工場の祭典
新潟県・燕三条といえば熟練の職人技と最先端技術が共存する職人の街として知られる。ここで作られる包丁や洋食器、工具、工芸品など多種多彩な製品を生み出すこの地には、世界中の本物志向のファンが訪れる。
そんな燕三条で2013年に始まったのが「燕三条 工場の祭典」だ。普段は立ち入れない工場を一般開放し、訪れる人々がものづくりを体感できる産業観光イベントとして、多くの人々を魅了している。
「工場内は本来、企業秘密の塊。でも祭典の期間中は、あえてすべてを開放し、間近で職人技を見ることができます」
そう語るのは2025年度実行委員長を務める秋元哲平氏。燕商工会議所青年部に所属し、株式会社青芳の取締役専務を務める。
この10年以で工場の祭典はBtoBからBtoCへと広がりを見せ、売上が3倍以上に伸びた企業も登場した。2024年には世代交代が行われ、秋元氏をはじめとする若手経営者たちが中心となり、イベントの運営を引き継いだ。その要となるのが、新団体KOUBAだ。
普段は立ち入れない工場を一般開放し、訪れる人々がものづくりを体感できるのが「燕三条 工場の祭典」。
燕三条を工場は
ものづくりの聖地に
秋元氏は、燕三条地域の製造業に根ざしながら、地域や業界の垣根を越えて多様な価値観を取り入れる柔軟な視点を持つリーダーの一人である。彼が掲げるのは「工場の祭典を文化創造の学び舎にする」というビジョン。作り手、売り手、ファンが交差する場に、地域の未来を担う仲間や企業を巻き込み、共に学び成長することを目指している。
KOUBAが意味するのは、工場でも工房でもない、機械加工と手仕事が融合する現場「人の手と機械の融合体」だ。その使命は、「燕三条を、KOUBAの聖地にすること」。
2024年から若手リーダーたちが運営を引き継ぎ、初の主催に挑戦した。イベントは単なる見学から進化し、トークセッションや展示、ファクトリーツアーを取り入れた多層的なフェスティバルへと発展。地域の技術と熱量を、より深く体感できる場として再構築された。
KOUBAが行う
4つの事業
KOUBAは「自社の経営を変えたい」「新しい製品を開発したい」といった地元工場向けの事業や、観光、イベントで地域を活用したい人々のニーズに応えるべく、「まなぶ」「つくる」「めぐる」「ひらく」の4つの事業を柱に活動している。
「まなぶ」では、経営やDX、クリエイティブに関する勉強会を通じて、各工場が自ら考え、変化を起こす力を育てる。「つくる」では、職人とクリエイターの協業による製品開発を支援し、「めぐる」では、工場見学や企業連携を含む産業観光ツアーを実施。「ひらく」では、地域のものづくりを発信するイベントを企画し、地域工場の目標となる発表の場を創出する。
燕三条の職人の技術や情熱がつまった商品を間近で見られる貴重な機会をぜひ活かしてほしい。
地域の未来に根ざした
「変革の連鎖」を生み出す
燕三条のものづくりは、今、大きな課題に直面している。職人の高齢化、後継者不足、働き手の減少。長年にわたり継承されてきた技術と情熱を、次の世代へとつなぐには、今こそ変革が必要だ。
秋元氏は、「ものづくりに対する多様な価値観を織り交ぜながら、学びを通して文化的なものづくりを生み出す産地を目指したい」と語る。その姿勢は、単なる産業観光イベントを越えた、文化と地域の未来を見据えた視点に満ちている。
2025年の「燕三条 工場の祭典」(10月2日~5日:参加工場数は133)は、そんな挑戦の集大成となる。秋元氏とKOUBAの取り組みは、単なるイベントを超えた地域の未来を切り拓く「変革の連鎖」となって広がっている。
近年、国内外からの観光客も増加し、関係人口の広がりも顕著だ。インバウンドツアーの問い合わせも増え続けている。燕三条が「世界のものづくりの聖地」として認知される日は、すぐそこに来ている。
「燕三条 工場の祭典2025」
10月2日(木)〜5日(日)開催
新潟県三条市・燕市全域、及び周辺地域 133か所で開催予定。2024年は参加企業数109社が工場やショップを開放し、職人の技や想いをそれぞれの現場から直接発信。来場者は各地で工場の見学や体験、買い物を楽しんだ。昨年(写真)の4日間開催累計データ【来場者数 38,592人 / 販売金額(税別)41,528,746円】
HP:kouba-fes.jp
写真提供:工場の祭典実行委員会
取材・文:脇谷美佳子