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自動化・ロボット

小型産業用モーターメーカー「オリエンタルモーター」がロボットの開発・製造スタート

製造ラインの要求にピッタリ合う“ちょうどいい自動化をコンセプト”に、小型・軽量・薄型ロボットを開発した老舗ものづくり企業の新たな挑戦をリポートする。オリエンタルモーターの139年目の挑戦とは。

メイン画像:OVR6軸垂直多関節ロボット

オリエンタルモーターの
ちょうどいい自動化とは?

小型産業用モーターを通じて、医療機器や半導体製造装置業界、食品包装装置業界、自動車製造ラインなど、多岐にわたって近代日本の産業の発展に貢献してきたオリエンタルモーターが来年、創業140年を迎える。

そして2024年、新たなプロジェクトがスタートした。自社が持つ「現場の改善のチカラ」と「モーター、制御技術」を駆使して開発・製造したのが小型ロボット「OVR」である。社内の生産技術部門と連携し、生産現場で出た課題を開発側でフィードバックしてシステムを逐次進化させ、今年4月から販売を開始した。

製品のコンセプトは「ちょうどいい自動化」。小型で軽量なサイズだけでなく、強みは「カスタマイズが可能」「メンテナンスが容易」「かんたん制御」なことだという。

「自社工場で内製したロボットを、さまざまなイベントで展示していたら、このようなロボットが欲しいという要望が徐々に増えてきました。それなら自分たちでロボットをつくろうと、昨年10月にモーションシステム事業部を立ち上げたのが始まりです」と開発リーダーの近藤大生さんは説明する。

コンセプトの“ちょうどいい”とは、ロボットに合わせてラインを見直すのではなく、製造ラインの要求にピッタリ合うロボットをカスタマイズできることだという。だからオーバースペックになることがない。「メインロボットはあるが、長い昇降のストロークが必要」「扁平性が欲しい」といったさまざまなニーズにきめ細かく対応する。既存ラインの変更に“ちょうどいい” さまざまなバリエーションのロボットを、リーズナブルな価格で提供している。

また、小型サイズだから、既存製造ラインへの「後づけ」にも柔軟に対応でき、比較的狭いスペースにも設置できるため、製造ラインのレイアウト変更を最小限にとどめながら生産性の向上を実現できる。

シンプル、小型。だからちょうどいい。
OVR

3軸水平多関節ロボット

薄型で狭い場所へのアプローチが可能。3軸目のアームは、ハンドを組みつけるなど自由に設計できる。垂直方向のアクチュエータに搭載すれば可動範囲を上下にも拡大できる。


4軸垂直多関節ロボット

最大可搬質量5kg。「OVR」の中で最も可搬重量が大きく、部品を常時水平な状態で安定搬送。ストロークが異なる3機種をラインナップし、要望に合わせてアームの長さを自由にカスタマイズ。


5軸垂直多関節ロボット

本体質量はわずか12.5kg。設置面積は130×130mm。最大可搬質量は1kg。軽量負荷の搬送に最適。小型・軽量のため持ち運び・据え付けが容易で、電動スライダと組み合わせて水平移動も可能。


6軸垂直多関節ロボット

第4軸目に手首回転用のモーターを追加することで、手首の回転・曲げによるさまざまな角度へのアプローチを実現。外観検査などで活躍。最大リーチ長(水平)480mm、可搬質量1kg。

 

 

ロボットを簡単に制御する
コントローラも新開発

メンテナンスにおいては、大きな故障でなければ自社で対応できるのも、この製品の特長だ。これまではトラブルが発生すると、メーカーに修理を依頼して、一定期間、製造ラインを停止することを余儀なくされた。

ところが、小型ロボット「OVR」なら各関節で使用しているモーターに異常が発生しても、自社で部品を取り外して交換し、製造ラインを直ちに復旧させることができる。FA化に向けてロボット導入のハードルを下げるだけでなく、ランニングコストの大幅な削減にもつながるのだ。

ロボットを簡単に制御するコントローラ「MRC01」も同時に開発された。専用のプログラミングソフトをダウンロードすれば、画面を見ながら直観的にティーチングをすることができる。ロボットプログラムを作成したことがない人でもスムーズに扱えるため、専門知識を持つ人材の確保や育成コストが不要となる。

ロボットコントローラ


ロボットコントローラMRC01(写真左)。ロボットコントローラユニットMRCUシリーズ(写真中央)は、AZシリーズminiドライバ (3~7軸)がワンパッケージになり配線の手間を省ける。

 

 

オリエンタルモーターが描く
これからの未来

オリエンタルモーターが開発したもうひとつのソリューションがある。それは購入前の段階で、ロボットの動作確認ができるシミュレータ「MRCリアリティ」だ。スマートフォンやタブレット、ヘッドマウントディスプレイを使用して、実際のラインを想定し、実空間にバーチャルロボットを設置・動作することができる。ロボットアームの動作検証や設置した際のサイズ感、可動に必要なスペースを視覚的に確認できる。

同社が新たに取り組んでいるのが、教育向け小型ロボットの商品化だ。インターンシップの学生を迎え入れ、ロボットを動かす楽しさやものづくりの面白さを体験してもらう取り組みを進めている。近日中にはロボット教育用ソリューションとして、ロボット組み立てキットを低価格で販売する予定だ。

「多くのご要望をいただいている水平薄型の多関節ロボットのラインナップ拡充にとどまらず、安全機能の拡充、関連ソフトの公開、ロボットのカスタマイズ性、メンテナンス性をさらに向上させ、自動化を自社で進めるお客さまのサポートを続けていきたいと考えています。今後は、人とともに働く協働ロボットの開発や、OVRと生成AIの連携など、新たに挑戦したいことがたくさんあります」と近藤さんは常に先を見据えている。


シミュレーションアプリMRC Reality

実際の空間に「OVR」のバーチャルロボットを設置・動作。サイズ感や機構の動きを確認できるシミュレーター。

 

 

PROFILE

モーションシステム事業部
技術課 課長

近藤大生氏

問い合わせ


オリエンタルモーター株式会社
東京都台東区東上野4-8-1
TEL:03-6744-0411


取材・文:脇谷美佳子
撮影:金子怜史

FACTORY JOURNAL vol.3(2024年秋号)より転載

Sponsored by オリエンタルモーター株式会社

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