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【SBT認定の取得企業に聞く】「品質・納期・コスト+エコ」を先取りして差別化

認証を取得することで、脱炭素経営に取り組む企業であることを広くアピールできる。中小企業向けSBTは、中小企業でも比較的取得しやすい国際認証だ。中小企業向けSBTを取得した再エネ100宣言 RE Actionの参加企業に、取得の経緯や手応えを聞いた。

メイン画像:プレス加工から2次加工まで、一貫ライン生産を強みとする越前たけふ工場(福井県越前市)。(画像提供:大和金属工業)

認証手続きのハードルを越え
新たな世界を広げる

大和金属工業(大阪府大阪市)は、金属をさまざまな形にプレス加工する金属加工の企業である。提供する製品は幅広い。太陽光発電のパワーコンディショナの筐体(容器)、蓄電池の筐体、ファクトリーオートメーション機器などさまざまだ。


メイン商品の1つである太陽光発電のパワーコンディショナの筐体(容器)。(画像提供:大和金属工業)

同社は、社員の働きやすさややりがいを追求するために、フラットな組織を目指してさまざまな工夫を行っている。チーム横断で動画を撮影し、SNSに投稿する取り組みもその1つだ。同社の橋本孔志社長は、「社員がのびのびと働くようになり、定着率が上がったと感じています。最近は、若い新規人材の獲得に向けてSNSを積極的に活用しています」と手応えを語る。

同社は環境に対する取り組みにも力を入れているが、その背景には、他社との差別化を図る狙いがあるという。「当社はプレス加工技術の1つである絞り技術を得意としていますが、世界でオンリーワンの技術を持っているわけではありません。これまで、我々の業界では品質、納期、コストが企業価値の基準でしたが、この先はエコであるかどうかも重視されるでしょう。判断基準が変わる前に、他社に先んじて環境に対する取り組みを行うことで、自社製品の差別化に役立てたいと考えています」と橋本氏は力を込める。


今年2月には工場一部に太陽光発電設備と、自社製造のパワーコンディショナを設置した。(画像提供:大和金属工業)

中小企業向けSBTを取得したのは、自社製品の付加価値を高める取り組みの一環だったという。「初めての申請では、専門用語や英語など不明な点を質問することが多くて手間取りました。特に、自社の6工場のデータを集計する作業が大変でした。しかし、翌年の報告作業はスムーズに行うことができました。一度経験したことが社員の大きな糧になったと感じています」と振り返る。

また、中小企業向けSBTを取得したことで、福井県や地元の金融機関が主催する脱炭素経営セミナーへ登壇のオファーが寄せられるなど、新たなチャンスが広がっているという。「脱炭素化はコストではなく投資です。この先CO2排出量の算定・報告などが義務化されるかもしれないと考えており、先行して取り組むことで自社の価値を大きく向上できると考えています」と前を向く。

DATA

大和金属工業株式会社
多様化する社会のニーズに対応するために、確かな品質管理と信頼される製品づくりをモットーとしている。大阪府と福井県に計6工場を持つ。


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

FACTORY JOURNAL vol.4(2024年冬号)より転載

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