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脱炭素

【SBT認定の取得企業に聞く】持続可能性を追求し、地域と社会に必要とされる企業に

認証を取得することで、脱炭素経営に取り組む企業であることを広くアピールできる。中小企業向けSBTは、中小企業でも比較的取得しやすい国際認証だ。中小企業向けSBTを取得した再エネ100宣言 RE Actionの参加企業に、取得の経緯や手応えを聞いた。

メイン画像:初期投資0円で設置した太陽光発電。これによって本社工場で使用する電気の約20%を賄うことができる。(画像提供:大川印刷)

環境対策は「バリュー」
企業は社会の持続性の上に

SBTとは「サイエンス・ベースド・ターゲッツ」の略で、日本語では「科学に基づいた目標」という。パリ協定が求める水準と整合した、企業が設定する温室効果ガス排出削減目標のことだ。SBTという国際イニシアチブが運営するSBT認定を取得すると、持続可能な企業であることを対外的にわかりやすくアピールできる。SBT認定には中小企業向けがあり、温室効果ガスの排出量が一定値未満であることや、大企業の子会社ではないことなどの要件を満たせば申請できる。

1881年(明治14年)から印刷業を営む横浜市の大川印刷は老舗の印刷会社だが、大川哲郎社長は「印刷しない印刷会社です」と話す。「もちろん、紙や印刷に対するリスペクトを失ったわけではありません。デジタル化やペーパーレス化が進む中でも、地域や社会に必要とされる存在になるには、新しい姿に生まれ変わらなければなりません。そのためには自己否定する姿勢も必要だと考えています」と説明する。

同社は2003年、本業である印刷業を通じて、地域や社会に必要とされる人と企業を目指すという思いから「ソーシャルプリンティングカンパニー®」という指針を公表し、石油系溶剤を使わないノンVOCインキや再生紙を使った印刷に取り組んできた。中小企業向けSBTにチャレンジしたのは、18年に環境省の補助事業に採択されたことがきっかけだ。


石油系溶剤0%のノンVOCインキ。石油系溶剤をまったく含まないことを示すマークも自社でデザインした。(画像提供:大川印刷)

「二酸化炭素(CO2)排出量の測定に取り組み、紙の印刷物によるCO2排出量の約8割が紙の製造工程で発生していることを知りました。そのため、紙を薄くするなど、CO2削減にはどのような対策が有効なのかが明確になりました」と大川氏は振り返る。「そもそも、経営の持続可能性は社会が持続することが大前提です。環境対策はコストではなくバリューであり、社員の幸せともつながっていることを多くの人に気づいてもらいたいと思います」と力強く語る。


ランプにLEDを搭載したLED-UV印刷機。従来の印刷機と比べて消費電力が約80%少なく、オゾンが発生しない。(画像提供:大川印刷)

 

DATA

株式会社大川印刷
太陽光発電の自家消費と、青森県横浜町の風力発電設備から電気を購入することで、19年に工場で使用する電気を再エネ100%とした。


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

FACTORY JOURNAL vol.4(2024年冬号)より転載

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