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躍動する“シリコンアイランド”九州に集結したものづくりの最先端をリポート

九州最大の産業展示会である「モノづくりフェア2024」には、九州のものづくり企業が求める最先端の製品やサービスが集まる。その熱量を取材した。

メイン画像:マリンメッセ福岡のA館・B館で同時開催されたモノづくりフェア。会場の地図には、大きく「満小間御礼!」と書かれていた。(筆者撮影)

<目次>
1.九州近郊から2万人超が来場学生の参加で会場に活気
2.産業用ロボットが描くものづくりの未来
3.人手不足の解決に役立つ外観検査の自動化を提案
4.省スペースに対応した小型・軽量ロボットに注目<

 

九州近郊から2万人超が来場
学生の参加で会場に活気

小学校の社会科の授業で、「半導体関連企業が集積する九州は、シリコンアイランドと呼ばれています」と習った。社会科見学の訪問先は、福岡県京都郡苅田町に新しくできた大規模な自動車工場。お土産に、プラスチックでできた新型車種の小さな模型をもらった。それから数十年が経ち、半導体産業と自動車産業は今、九州を象徴する基幹産業になっている。

毎年秋、福岡市のコンベンションセンター・マリンメッセ福岡で、九州最大の産業展であるモノづくりフェアが開催される。今年も、九州やその近郊から2万人を超える来場者が訪れた。中でも、学生の姿が目立つ。高校生だろうか、ノベルティの大きな袋を抱えて、楽しそうに話しながらブースを回っている。その様子が、展示会の雰囲気をより一層明るいものにしていた。

産業用ロボットが描く
ものづくりの未来

今年、第40回の節目を迎えたモノづくりフェアのテーマは、「つくる を つくる ー現場が世界を変えるー」。そのテーマ通り、多種多様なロボットの出展が目立った。川崎重工業と川重商事のブースでは、外観検査のデモンストレーションを行う産業用ロボットを展示していた。検査品のヘルメットをロボットが持ち上げ、カメラの前でくるくると回す。担当者に聞くと、カメラではなく検査品を動かすことで、より省スペースで検査ができるメリットがあるという。カメラは曲面の細かい傷も高精度でとらえることができ、ソフトウェアと組み合わせることで、精度の高い外観検査を短時間で実施できると話していた。

また、異なるロボットと高解像度カメラ、ソフトウェアを組み合わせて、対象物の形を判別し、ロボットが自動で仕分けを行う、バラ積みピッキングのデモンストレーションも行われていた。多関節ロボットならではのスムーズな動きで、次々に対象物の仕分けを進める。ロボットとセンサーなどを組み合わせて、システムインテグレーションの可能性を強くアピールしていた。

自由自在の動きを見せる
川崎重工業の産業用ロボット

 


川崎重工業の産業用ロボット。素早い動きで、ヘルメットの全体をカメラに向けて動かしていた。(筆者撮影)

人手不足の解決に役立つ
外観検査の自動化を提案

九州での大規模な展示会に初めて出展したというJUKI。その背景について担当者に尋ねると、「九州では、大規模な半導体関連工場などが進出する中で、人手不足に悩んでいる企業が多いと考えています。そのため、人手不足の解消につながる製品やサービスを提案したいと考え、出展を決めました」と話していた。近年、自動車部品をはじめとする工業製品では、製品の品質に加えて、トレーサビリティが重視され始めているという。「それらを限られた人数で実行するには、検査の工程を正確に記録することが重要です。当社の検査機は、こうした要件を満たし、自動化を実現することができます」と担当者は強調する。

同社のブースでひときわ注目されていたのが、「金属粉末射出成形(MIM)」の展示だ。これは、JUKI会津(福島県喜多方市)が得意とする技術で、金属の粉末と樹脂を混ぜ込んでペレット状にし、プラスチック射出成形機を使って射出成形するものだ。通常、金属は金型を使って成形することが多いが、MIMでは、樹脂と混練することでより複雑な形状の製品を作り上げることができる。しかも、部品の完成形に近いニアネットシェイプの状態で提供することが可能だという。担当者は「九州の方々にもMIMに興味を持ってもらっていると感じています」と手応えを得ていた。

モノづくりフェア初出展のJUKI

 

MIMという技術を活用することで、従来の金型では製造しにくかった複雑な形状の部品を作ることができる。(筆者撮影)

省スペースに対応した
小型・軽量ロボットに注目

中小規模の工場では、限られたスペースをいかに効率よく活用するかが大きな課題だ。そうした中、オリエンタルモーターの小型ロボット「OVR」が参加者の関心を集めていた。小型、軽量であることに加えて、産業用ロボットの中では比較的安価に構成できる。垂直方向の動きだけでなく、水平多関節で横方向に動くロボットもデモンストレーションを行っていた。さまざまなワークをつかんだり運んだりする様子に、多くの人が足を止めて見入っていた。

モノづくりフェアには、自治体の関連団体も多く出展していた。ものづくり企業からの相談を広く受け付けている飯塚研究開発機構(福岡県飯塚市)の担当者は、「最近は、IoTの導入方法や品質管理に関する相談が増えています。後継者不足や、スキルの属人化という課題に直面して、解決策を探っている企業が多いと感じています。当機構は、コーディネーターによる支援やマッチングなどを通じて、企業の課題解決や付加価値の向上に貢献したいと考えています」と語った。大規模な半導体関連工場が進出して、産業構造や雇用の状況が変化する中、九州のものづくりの現場が直面する課題と未来を垣間見ることができた。

新開発のロボットを展示した
オリエンタルモーター

 

小型で軽量のロボットが立ち並ぶブースでは、さまざまな動作のデモンストレーションが行われていた。(筆者撮影)


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

FACTORY JOURNAL vol.4(2024年冬号)より転載

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