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【SIer協会 高本専務インタビュー】ロボットSI検定を拡充し人材育成のすそ野を広げたい

企業の生産性向上のカギを握るロボットシステムインテグレータ(SIer)。人材育成の現状と課題について、SIer協会の高本治明専務に聞いた。

解消されない人材不足

――国内のSIer人材の現状を教えてください。

高本 いま、工場の日本回帰が進んでいます。それと、2015年以降に中小企業や三品産業(食品・医薬品・化粧品)の分野でもロボットを使い始めたため、需要が徐々に上向いています。しかし、SIer人材はあまり増えていません。認知度が低いこともあり、人材不足が解消されていません。

――SIerの人材育成は、どのような状況でしょうか?

高本 日本にもロボットを学べる大学はありますが、学べるのはロボットをつくる学問。ロボットを使ったシステム構築は、日本国内でほとんど研究されていません。

ロボットSIは、大企業の製造技術担当者が、各社のやり方で独自のシステムを構築してきました。SIer協会が設立された2019年には、SIer企業がまだ表立った形で活動していませんでした。社会的に価値が認められておらず、人材育成のための教育機関も存在していなかったのです。

SI検定を認定検定へ

日本ロボットシステムインテグレータ協会 高本治明専務

――SIerに必要な知識とは?

高本 まず、製造工程を分析する「製造技術」の能力が必要です。そのうえで、適切な方策を提案します。人の配置変更や新たな機械の導入だけでなく、ロボットを使って製造ラインをつくるという選択肢もあり得ます。また、「製造技術」のほかに、「安全対策」、「機械設計」、「電気設計」、「ロボット制御」、「情報処理」「組み立て・設置」、「保守・運用」、「プロジェクト管理」といった幅広い知識が必要になります。


「ロボットアイデア甲子園」などを通じて人材育成に注力しているSIer協会。写真は2023年度の全国大会の出場者。(写真提供 SIer協会)

――ロボットSI検定制度をどのように整備しますか?

高本 工業高校の先生から要望をうけて、4級を新設することになりました。「高校で学んでチャレンジできる資格がほしい」と強く要望されたのです。4級から3級、2級へと、知識や技術をステップアップする体系づくりを済ませたら、厚生労働省の認定検定に申請したいと考えています。認定検定になれば、就職にも役立つため、工業高校の生徒のみなさんの取り組み方も変わってくると期待しています。

――今後は、どのようなことに注力していきますか?

高本 SIer協会では、今年4月に中小企業支援機関のアドバイザー向けに、「ロボット導入支援の手引き」を作成しました。各地で地元企業に密接に関わっている方々にロボットのことを知っていただいて、ロボットの良さを広げていただけたらと考えています。具体的には、都道府県の工業技術センターや商工団体、地方銀行などにロボットの良さをアピールしていきたいと思っています。

DATA

日本ロボットシステムインテグレータ協会


FACTORY JOURNAL vol.3(2024年秋号)より転載

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