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三菱総研がDX推進状況を調査「3年間でビジネス変革の伸びが鈍化傾向」

三菱総合研究所と三菱総研DCSは、リポート「VUCAへの対応力が企業を変革する ~『経営×DXの連動』と『ヒト×生成AIの共創』~」を公表した。2021年からの3年間で、「ビジネス変革の伸びが鈍化した」と分析している。

<目次>
1. 調査のスコープを経営領域まで拡大
2. 調査結果の概況
3. 企業変革の要点を2つの観点で整理 

 

調査のスコープを
経営領域まで拡大

DXの3つのステップ(出典 三菱総合研究所)

近年、企業を取り巻く環境はますます複雑で多様になり、不確実性が増している。この調査は、2023年12月にwebにて直近1年間の売上高が100億円以上の企業を対象に行われた。DX元年の2021年に調査開始し、今回の調査で3回目を迎える。

過去2回の調査では、DXの進展度(デジタイゼーション、デジタライゼーション、ビジネス変革への取組状況)、推進課題、解決策を確認した。3回目となる今回の調査では、DXが一般化したことから、特に変化が激しい外部環境への対応状況に着目し、調査のスコープを「DX」から「経営領域」まで拡大し、VUCA(ブーカ)※への対応状況を分析した。

※VUCA—Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字。震災や紛争、疫病、技術革新等により社会の先行きを見通すことが難しくなった状況を表す概念。

調査結果の概況

デジタル化の3段階(出典 三菱総合研究所)

調査の結果、2021年からの3 年間にビジネス変革が鈍化し、先進企業ほど外部環境に応じて柔軟に経営戦略を対応させている傾向がみられたと分析している。3年間の調査の経年比較において、「デジタル化の3段階」(デジタイゼーション、デジタライゼーション、ビジネス変革への取り組み状況)の構成割合に大きな変化はなかった。デジタライゼーションとデジタル・トランスフォーメーションを合わせた割合は、2022年の70.6%に対し、今回の調査(2023年)は73.0%だった。

「先進・非先進企業」と「経営戦略・DXの連動性」のクロス集計(出典 三菱総合研究所)

ビジネス変革に取り組み、売り上げ成果も出せている企業(先進企業)ほど、外部環境に柔軟に対応できる体制が整っており、経営戦略とDXの取り組みが連動している。柔軟な体制が整っていて、変化に即座に対応できる割合は先進企業が43.9%、非先進企業は10.9%となっている。

企業変革の要点を
2つの観点で整理

このリポートでは、「経営」と「テクノロジー」の2つの観点から VUCAへの対応状況を深堀り分析している。VUCA時代に企業を変革するための要点を、2つの観点(経営・テクノロジー)で整理している。

ポイント1
経営×DXの連動(「経営観点」でのVUCA対応)

対応体制と売り上げ成果のクロス集計(出典 三菱総合研究所)

1.「外部環境への柔軟な対応体制が整っており、変化に即座に対応できる」ほど、売り上げ成果が出ている。

2.経営戦略とDXの取り組みが、内容面または指標面で連動しているほど、売り上げ成果が出ている。

3.DXは単独で実施するのでなく、外部環境に応じて策定した経営戦略を推進する手段と位置づけることが有効である。KPI設計時は、DXの評価指標と経営・事業KPIをひもづけることがポイントだ。

ポイント2
ヒト×生成AIの共創(「テクノロジー観点」でのVUCA対応)

経営戦略策定とDX推進のイメージ図(出典 三菱総合研究所)

「生成 AI」は新技術として急速に利用者を伸ばしているが、「生成AI関連サービス(ChatGPTなど)に関して、利用状況を教えてください」 という設問に対して、「活用している」と答えた人は25.5 %で、「活用しておらず、 今後も活用予定はない」は11.7%、「分からない」の8.7%を合わせて活用する意向がない人は約2割を占める。

1.データ・AIで意思決定を自動化するのでなく、部分的な導入を目指す割合が増加している。データ・AIと人間で役割分担して意思決定する傾向がある。

2.新たな技術トレンドである「生成AI」について、ビジネス変革企業ほど幅広い用途で業務活用している。

3.「生成AI」には、正確性やリスクの観点から人間のチェック・フォローが必要な領域もある。できることや精度を見定め、「ヒト×生成AI」の役割分担に基づき業務設計することが重要である。

DATA

三菱総研 日本企業のDX推進状況調査結果【2024年度版】を公表


取材・文 / 脇谷美佳子

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