製造業向けロボット市場 2028年には2兆円を突破
2024/05/16
富士経済は、製造業向けロボットの世界市場に関する調査の結果を発表した。2023年後半から中国経済の悪化に伴い落ち込んでいた製造業向けロボット市場は、徐々に回復に向かい、2028年には2兆円を突破すると予想される。
1. 製造業向けロボット市場 2025年に過去最大
2. 協働ロボットや小型垂直多関節ロボットが拡大
3. 製造業向けロボットの地域別市場規模
製造業向けロボット市場
2025年に過去最大
製造業向けロボットの世界市場
世界中の国や地域で、人手不足や人件費の高騰が深刻な問題となっている。日本においても、有効求人倍率が全地域で1を超え、人手不足感が増してきている。これらへの対策として製造業向けロボットのニーズは大きく、今後も拡大が期待される。
総合マーケティングビジネスを扱う富士経済は、2023年11月から2024年2月にかけて、参入企業や関連団体へのヒアリングなどによって製造業向けロボットの世界市場を調査し、その結果を「2024年版 ワールドワイドロボット関連市場の現状と将来展望 FAロボット編」にまとめた。
調査では、溶接・塗装系、アクチュエータ系、組立・搬送系、クリーン搬送系の製造業向けロボット17品目、半導体・電子部品実装向けロボット6品目、FAロボット向けの注目構成部材8品目、FAロボット関連のソリューション・サービス2品目について、市場を分析し予想を立てている。
人手不足に対応できるロボットによる自動化のニーズは高いが、2023年には中国景気の悪化などに伴い急ブレーキがかかっていた。2024年は年初から単発的な設備投資が見られ、市場は徐々に回復に向かっている。2025年にはこれまでの最高であった2022年を超えて、過去最高の市場規模を更新すると考えられている。2028年には2兆円に達する見込みだ。
協働ロボットや小型垂直多関節ロボットが拡大
クリーン搬送系のウエハ搬送ロボットも伸長か
協働ロボットは、人との接触を検知して停止するなどの安全機能を備えたロボットだ。人の代わりに単純作業を行うこともでき、人と同じ空間で協働作業ができるという特徴もある。オプション品を充実させることで、さまざまな場面で活用することが可能となる。手軽に設置・運用できることから、今後も市場は拡大すると予想される。
垂直多関節ロボットは、人の腕のように動作し、複雑な作業をこなせるロボットで、コンシューマ機器や自動車などの生産ラインで使用されることが多い。2024年は中国で設備投資が再開されていることから、2025年以降本格的な回復が予想される。
ウエハ搬送ロボットは、半導体の生産で前工程の基盤を次の行程に運ぶロボットだ。中国では、米中貿易摩擦を背景に、半導体の国産化に注力していることから、ウエハ搬送ロボットの需要も増加するとみられている。
アジア市場が最も拡大
5年でほぼ倍増の勢い
製造業向けロボットの地域別市場規模
現在の地域別製造業向けロボット市場では、アジア市場が最も大きな割合を占める。2023年は中国経済の悪化から設備投資が抑制されたこともあり市場規模が縮小したが、今後5年の増加は各地域の中で最も大きくなる見込みだ。
製造業向けロボットのアジア市場の8割近くを占める中国では、自国メーカーによるロボット開発などに補助金制度を設けるなどして、ロボットの開発や導入拡大を推進している。その成果もあり、シェア上位に位置する中国ロボットメーカーも散見されるようになった。今後は、日本などのロボットメーカーとの競合が予想される。
また、近年は中国だけではなく、台湾、韓国などのメーカーが注力度をさらに高めている。韓国は、2024年は前年同様スマートフォン関連の設備投資は低調となる予想だが、ディスプレイ関連の設備投資の伸びにより、市場はわずかに拡大する予想だ。台湾は、EMS、半導体・液晶関連が主要な需要先である。
中国における人手不足や人件費の高騰などを背景とし、インドなどその他のアジア地域への生産シフトが活発化していくと考えられ、需要の増加が期待される。今後、日本を含む世界各国で、製造業向けロボットの活用が拡大していくと予想される。
DATA
取材・文/ダブルウイング