ハンズオン支援で生産管理体制を再構築 中小機構がIT化・自動化の課題解決をサポート
2024/02/27
中小機構は、経営課題の解決に取り組む中小企業に専門家を派遣する「ハンズオン支援」を実施している。福岡県北九州市の戸畑製作所は、IT化・自動化を進めるための課題の整理と生産管理体制の再構築を図るため、ハンズオン支援を活用している。
CASE01 戸畑製作所(福岡県北九州市)
営業部門と製造部門の
情報連携が不十分
戸畑製作所は、1948年創業の非鉄金属製造メーカー。純銅の鋳造・溶接などの分野で国内屈指の技術力を有しており、国内外の製鉄所に納入する高炉用送風羽口・銅ステーブ・転炉用ランスノズルなどの純銅製品は顧客から高い評価を得ている。ここ数年は新規事業として、軽量性を損なうことなく発火温度が飛躍的に向上する「難燃性マグネシウム合金」の開発を進めている。
その一方で、「生産計画立案に営業情報や製造情報がうまく反映されず、多くの不具合が生じていました」と松本敏治社長は打ち明ける。さらに、営業部門・製造部門・総務経理部門で、情報が一元管理されていないなど、部門間連携が不十分なため各部門で重複入力・同じ資料の作成など、非効率な業務が生じていたという。
主力製品の高炉用送風羽口。(出典:戸畑製作所)
中小機構のハンズオン支援を初めて活用したのは2019年1月。この支援は、さまざまな経営課題の解決を図りたい企業に対して、専門家を一定期間(5ヶ月程度~最大12ヶ月)派遣する制度。単発のアドバイスではなく、一定の期間にわたって企業に伴走しながら課題解決に至るプロセス(PDCA)を支援することで、人材育成と仕組みづくりを通じた企業自身による自立的な課題解決の実現を目指す。
生産管理体制の再構築へ
3つの目標を定める
ハンズオン支援では、生産管理体制の再構築を進めるため、「生産管理の仕組みづくり」、「納期設定の仕組みづくり」、「実績把握・進捗管理の仕組みづくり」の3つの目標を定めた。管理職を中心に8人のメンバーがプロジェクトチームを組織し、アドバイザーの支援を受けながら課題の解決に主体的に取り組んだ。
生産管理の仕組みづくりでは、膨大なデータを図番ごとに整理し直し、標準工程や工数(段取り、加工、載替)などの基準情報を整備した。その結果、理にかなった生産管理の基礎が構築でき、見える化した生産計画・生産進捗を営業・経理部門と共有して、生産性改善だけでなく、納期回答の改善や原価の改善につなげることが可能となった。
2020年7月からは、「全社最適なITシステムの導入」に取り組む。各部門のキーマンを交えたブレーンストーミングを通じて、システム・業務両方の改善検討を進め、「新業務フロー」を作成した。「業務の棚卸しや仕組みづくりの大切さを再認識して、社員の意識が大きく変わりました」と松本社長は胸を張る。
2023年4月に
自動化装置を初導入
高炉用送風羽口の自動化装置(出典:戸畑製作所)
中小機構の支援を受けて、戸畑製作所は高炉用送風羽口の溶接工程で、2023年4月に自動化装置を初めて導入した。2024年度には、製造工程の自動化をさらに進める方針だ。松本社長は、「ハンズオン支援ではソフト面、その後の生産工程スマート化診断においては溶接ロボットの導入というハード面でご支援いただきました。ソフト・ハードの支援をワンストップで受けられることに大きなメリットを感じています」と話している。
FACTORY JOURNAL vol.1(2024年冬号)より転載