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【業界レーダー】脱炭素化とスマート化で付加価値アップを目指すには?

やまぐち産業振興財団は、山口県内の企業に向けて、ビジネスマッチングや新ビジネスの創出をサポートしている。会員企業は、スマート化と脱炭素化にどのように向き合っているのか、最前線を取材した。

広がる「ミルクラン方式」
選ばれるための脱炭素化

やまぐち産業振興財団は、化学メーカーや素材メーカーが多い山口県で、大手企業と中小企業のビジネスマッチングを仲介している。「例えるなら『無償の商社』のような役割です。約30年前から半導体分野への県内企業の進出を支援しており、現在、半導体関連の事業を営む県内企業は100社を超えています」と、事業支援部の松田正樹氏は振り返る。

会員企業の間で、脱炭素化やスマート化への関心が高まっている背景には、大手企業のサプライチェーンに「ミルクラン方式」を導入する動きがあると松田氏はいう。ミルクラン方式とは、1台の車両で複数のサプライヤーを巡回して、複数の配送先へ届ける仕組みだ。一括集荷と小口配送を組み合わせた効率的な物流方法とされている。物流システムの効率化と同時に、車両の運行による二酸化炭素(CO2)排出量を削減する狙いがあるとみられる。「今年に入って、ミルクラン方式を採用する大手企業が増えています。そうした企業と取り引きしている中小企業に対しては、サプライヤーに選ばれるように、付加価値を高める努力がより一層求められています」と中小規模の製造業が直面する課題を指摘する。

その一方で、脱炭素化やスマート化に向けての第一歩をなかなか踏み出せずにいる企業もあるという。「当財団では、CO2削減やデジタル化を後押しするために、脱炭素化やデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する補助事業を行っていますが、多くの企業から申し込みがあり、意欲の高まりを感じています」と前を向く。

Q1.製造業における脱炭素化の現状は?

A.関心は高いが、取り組みはこれから
やまぐち産業振興財団が開催する脱炭素化のセミナーには、多くの会員企業が参加している。どのような取り組みをすればよいのか、模索の段階にある会員企業が多い。

Q2.スマートファクトリー化の現状は?

A.古い設備の更新から着手
会員企業には少量多品種の生産スタイルが多いため、自動化にハードルを感じている企業もある。経年した生産設備を更新するなど、取り組みやすいところからスタートするケースが一般的だという。

Q3.中小規模の製造業が抱える課題は?

A.専門知識・人材の不足とコスト
脱炭素化やスマート化に関する知識を深めるには時間や手間がかかり、専門人材を外部から受け入れるにはコストがかかる。そうした現状が脱炭素化やスマート化のハードルになっている。

Q4.行政機関に望むことは?

A.中小企業が取り組むべき範囲を明確に
現在、脱炭素化に関して中小企業がどこまで取り組むべきかを判断しづらい状況にある。どの程度まで取り組むべきなのかを国や県などが明確にすれば、中小企業も取り組みやすくなる。

Q5.脱炭素化・スマート化の展望は?

A.補助事業の成果を踏まえて進める
今年度スタートした脱炭素化やデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する補助事業には、会員企業からの申し込みが殺到しているという。その結果やニーズを踏まえて、来年度以降の支援策を検討していく。

DATA

公益財団法人やまぐち産業振興財団
山口県内の中小企業が直面する、業務改善、販路開拓、商品開発、新分野進出などに関する課題に対して、相談窓口の開設、支援施策の紹介、企業・人材情報の提供などを支援している。1979年に設立。


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

FACTORY JOURNAL vol.3(2024年秋号)より転載

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