業界ワード インダストリー4.0
2024/09/05
インダストリー4.0は、2011年にドイツ政府が提唱した産業政策で、「第4次産業革命」とも呼ばれている。製造業においてIT技術を取り入れ、モノづくりの現場を効率化することを目指している。
インダストリー4.0
モノづくりの現場を効率化
産業革命の推移(出典 総務省)
IoTやAI技術の発展により、製造業などモノづくりの現場において大きな変化が生まれている。この変化のなかで近年注目を集めているのが「インダストリー4.0」という概念だ。今後のモノづくりの現場を効率化し、市場競争力を高めていくためには、インダストリー4.0に基づく取り組みが欠かせないと言われている。
第1次産業革命(インダストリー1.0)は、18世紀に蒸気の利用と生産の機械化によって始まった。第2次産業革命(インダストリー2.0)は、19世紀に電気の使用と組立ラインによる製造が行われたことからスタートする。第3次産業革命(インダストリー3.0)は、1970年代にProgrammable Logic Controller (PLC)やコンピューターを用いた部分的な自動化が行われたことから始まった。情報と通信技術を産業に応用することを特徴とし、第3次産業革命の発展の上に成り立っている。
インダストリー4.0の
設計原則
現代に第4次産業革命を起こす取り組みであるインダストリー4.0には、4つの設計原則がある。
1.相互運用性
2.情報の透明性
3.技術的アシスト
4.分散的意志決定
相互運用性
相互運用性とは、モノ・人・システムを問わず、生産に関連するものすべてをつなぐことを意味します。モノ・人・システム間で情報を密接にやりとりし、さまざまなセンサーやデバイスを連携してリアルタイムにデータを収集することで、自律的な意思決定を可能にします。
情報の透明性
情報の透明性とは、集めたデータをもとに仮想モデルを作成し、可視化することです。集めたデータは製品開発や需要の分析など、さまざまな方面に活用できます。
技術的アシスト
技術的アシストとは、センサーやデバイスを使ってデータ収集をサポートすること、重労働や危険な作業を産業ロボットで代替することなどを意味します。
分散型意思決定
分散型意思決定とは、現実世界で収集したデータをサイバー空間で分析し、現実世界へフィードバックするCPS(Cyber-Physical System:サイバーフィジカルシステム)と呼ばれる仕組みを用いて、生産ラインの意思決定をできる限り自律化することです。
日本では2017年に
経済産業省が提唱
Connected Industriesの概念(出典 経済産業省)
日本におけるインダストリー4.0は、2017年に経済産業省が提唱した「Connected Industries」という概念に基づいて推進されている。その特徴は、「自動走行・モビリティサービス」、「バイオ・素材」、「スマートライフ」、「ものづくり・ロボティクス」、「プラント・インフラ保安」の5つを重点分野として定め、リアルデータの共有や利活用、データ活用に向けた基盤整備(研究開発、人材育成、サイバーセキュリティ)、さらなる展開(国際、ベンチャー、地域・中小企業)といった横断的な取り組みを行っている点にある。
現在、インダストリー4.0に向けた取り組みは企業中心で行われているケースが多いが、今後は日本の国の政策としてインダストリー4.0に向けた取り組みが行われる可能性もある。
取材・文/高橋健一